2020年11月28日

「川柳スパイラル」10号発行

「川柳スパイラル」第10号が発行されました。今号の「小遊星」のゲストは広瀬ちえみさんです。かもしか川柳社のこと、川柳Z賞のこと、バックストロークのこと、そして川柳杜人のこと。広瀬さんのお話をつうじ、川柳界の1990年代〜2000年代を概観できる内容になっています。ゲスト作品は岡田幸生さん、特集は「自由律と短句」、本格川柳小説は今号で最終回です。

【川柳スパイラル10号・内容】
・巻頭写真  入交佐妃
・霧の中の渦  小池正博
・同人作品 Spiral Wave
・【同人作品評】同位性の川柳  石田柊馬
・【ゲスト作品】コロナのころ  岡田幸生
・【特集】自由律と短句
  自由律俳句と自由律川柳  石川聡
  短句という地平  本間かもせり
・会員作品 Plastic Wave
・現代川柳あれこれ Biotope  小池正博
・小遊星 連載第10回  飯島章友×広瀬ちえみ
・本格川柳小説 最終回 川柳のプライド  川合大祐
・【リレー・エッセイ】とある日に寄り添う川柳  清水かおり
・妄読ノススメ  兵頭全郎
・野鳥雑記  小池正博
・GAKKOの川柳な人たち  月湖
・投句規定・『はじめまして現代川柳』
・編集後記

入手をご希望の方は以下から、編集発行人である小池正博へご連絡お願いします。Twitterのばあいは相互フォローの上メッセージをお送りください。
川柳スパイラル掲示板
小池正博Twitter
posted by 飯島章友 at 08:36| Comment(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月25日

言葉と肉体

三島由紀夫が『太陽と鉄』にこんなことを書いている。

 つらつら自分の幼時を思いめぐらすと、私にとっては、言葉の記憶は肉体の記憶よりもはるかに遠くまでさかのぼる。世のつねの人にとっては、肉体が先に訪れ、それから言葉が訪れるのであろうに、私にとっては、まず言葉が訪れて、ずっとあとから、甚だ気の進まぬ様子で、そのときすでに観念的な姿をしていたところの肉体が訪れたが、その肉体は云うまでもなく、すでに言葉にむしばまれていた。
 まず白木の柱があり、それから白蟻が来てこれを蝕む。しかるに私の場合は、まず白蟻がおり、やがて半ば蝕まれた白木の柱が徐々に姿を現わしたのであった。
(『三島由紀夫スポーツ論集』・岩波文庫より)

 川柳も前句付が発祥という歴史に鑑みると、まず言葉がある。言い換えれば、まず白蟻がいる。だから、肉体という現実的感覚を川柳に付与するときにはもう、それは半ば蝕まれている。いや、その「現実的」じたいも言葉によって呼び覚まされたのであれば、最初から言葉に侵食されている。

三島が15歳のときの自分を批評した短編『詩を書く少年』には、「まず言葉が訪れ」たかのような主人公が描かれている。

自分のまだ経験しない事柄ことがらを歌うについて、少年は何のやましさをも感じなかった。彼には芸術とはそういうものだとはじめから確信しているようなところがあった。未経験を少しも嘆かなかった。事実彼のまだ体験しない世界の現実と彼の内的世界との間には、対立も緊張も見られなかったので、いて自分の内的世界の優位を信じる必要もなく、る不条理な確信によって、彼がこの世にいまだに体験していない感情は一つもないと考えることさえできた。なぜかというと、彼の心のような鋭敏な感受性にとっては、この世のあらゆる感情の原形が、ある場合は単に予感としてであっても、とらえられ復習されていて、爾余じよの体験はみなこれらの感情の元素の適当な組合せによって、成立すると考えられたからであった。感情の元素とは? 彼は独断的に定義づけた。「それが言葉なんだ」
(『花ざかりの森・憂国――自選短編集――』・新潮文庫より』)

感情の元素の組合せ=言葉の組合せ次第で、未経験なことであっても経験したかのように成立させられる。少年にとっての言葉は、しち面倒臭い経験=肉体という手続きを踏むことなしに現実を構築できるものだった。しかし、そんな少年も最後、「僕もいつか詩を書かないようになるかもしれない」と変化の兆しをみせ、物語は終わる。

言葉が先に訪れた三島由紀夫自身も、彼の死までの道程を見るに、けっして言葉に安住してはいなかった。いや、三島ほど言葉と肉体の相克を乗り越えようとしなくとも、詩歌の創作者は多かれ少なかれ、「詩を書かないようになる」予感を持ちつづけるものではないだろうか。それなしに惰性で何十年も創作をつづけられる人を、わたしは想像できない。
posted by 飯島章友 at 23:58| Comment(0) | 川柳論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月23日

ピロウファイト/湊圭史


明日の国の向こうはきっと駐車場

メトロポリスの美術館ほど悪じゃない

その内に令和はなかったことになる

重力はユーモアだから信じよう

火柱を吸ったら気持ちよく飛べる

イカロスは二つの国家を翼とし

ごめんごめん遠い世界のことでした

嘴の代わりについている絵の具

きみも勿論だがむしろ枕がよく戦った

背中からふつと開いて居なくなる



【ゲスト・湊圭史・プロフィール】
1973年生、松山在住。「川柳スパイラル」同人、詩誌『Lyric Jungle』同人。『はじめまして現代川柳』(小池正博編著、書肆侃侃房)の中の人。10年に一度稼働する謎の短詩ウェブサイト「s/c」を運営(もしくはほぼ放置)。


縦書き画像をご覧になるばあいは以下をクリックしてください
ピロウファイト.gif

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2020年11月14日

「Picnic」No.1

「Picnic」1
発行日 2020年11月1日
編集 野間幸恵・石田展子
発行所 TARO冠者
定価 ¥1000

5・7・5作品集「Picnic」No.1をいただきました。参加者は中村美津江、木村オサム、月波与生、樋口由紀子、松井康子、梶真久、大下真理子、あみ こうへい、榊陽子、広瀬ちえみ、石田展子、野間幸恵の各氏です。同集は俳人と柳人が一緒に参加しています。

 マジシャンの鳩を並べる仮眠室  月波与生

「マジシャン」「鳩を並べる」「仮眠室」の相乗効果によってリアル「感」が出ています。「リアル」感よりもリアル「感」が大事。

 うどん屋で振り向いたのはオペラ歌手  樋口由紀子

江戸川柳っぽい意外性とリアル「感」があり、とても好きな句です。

 九州と四国の間にエビフライ  〃

確かにエビフライがいいと「感」じられます。ミニトマトでは駄目。

 時間より零れる魚と日曜日  梶真久

流れの水嵩が増しているのでしょうか。「魚」と「日曜日」がこぼれてしまう。

 しあわせにすると言うコロッケのくせに  広瀬ちえみ

コロッケのくせに生意気だぞ。なのに、あれ、へんだな、目からジャガイモがぽろぽろこぼれてくるよ。

 どこまでも遠浅だった市川雷蔵  石田展子

市川雷蔵の存在「感」をうまく捉えています。「どこまでも」が的確。ちなみに、わたしは「陸軍中野学校」シリーズが好きです。

 詐欺師かもしれない月の匂いして  野間幸恵

だから『竹取物語』だって裏読みが必要。

同集はスパイラル綴じで、作品はすべて横書きになっています。短詩の世界での横書きはまだまだ珍しいかも知れませんね。

誰が言ったか忘れましたが、短歌を作ったら縦書きと横書きの両方で確認するとよい、と。確かに縦と横では歌の印象が違うんです。縦書きを横書きに直して読んでみると、漢字の多用が気になったり、文末の体言止めが気になってきたり。逆に、横書きを縦書きに直して読んでみると、動詞で終えた文末が無骨に思えてきて、助動詞を添えようという気持ちになったり。余談でした。
posted by 飯島章友 at 23:30| Comment(0) | 柳誌レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月10日

『はじめまして現代川柳』/小池正博 編著

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『はじめまして現代川柳』/小池正博 編著/書肆侃侃房/定価:本体1800円+税


もうお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、現代川柳アンソロジー『はじめまして現代川柳』が発売されております。35名の76句選です。

川柳というジャンルはアンソロジーがあまりありません。なので、過去の柳人(川柳作家)の作品に触れるためには、高いお金を払って古本を購入しなければならないことも少なくありませんでした。でも『はじめまして現代川柳』が出たからにはもう大丈夫です。

戦前の木村半文銭・川上日車や、戦後の中村冨二・河野春三など、現代川柳のルーツともいえる柳人の作品群が収録されています。もちろん石部明や石田柊馬、なかはられいこに代表される、平成の川柳を牽引してきた柳人も大勢収録されています。またポスト現代川柳として川合大祐・柳本々々・暮田真名ら、若手柳人も抜かりなく収録されています。最終章には「現代川柳小史」が付されており、順を追って現代川柳史を理解することもできるのです。

アンソロジーというのはそのジャンルの名作を手軽に確認でき、また歴史的な発展を知ることができるため、後々まで重宝するものです。わたしも短歌を始めたころに購入した小高賢 編著『現代短歌の鑑賞101』(新書館・1999年)『近代短歌の鑑賞77』(新書館・2002年)を今以て使いつづけています。同じように本書も、これから先ずっと皆さんにとって有用な一冊になると思います。
posted by 飯島章友 at 22:00| Comment(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする