2018年12月01日

するから   千 春


船を漕ぐ掃除機を忘れないで下さい

いきづらさ八百屋で買ったチョコレート

イライラする真夜中の牛の瞳

庄内平野で恋するつもりだった

この場所が好き胡桃が深く深い

目をそむけなくなった手首のゆめものがたり

「めっぽう赤い服!」地球が自転するから

申し訳ないなめ茸がやさしさを失った



【ゲスト・千春・プロフィール】
1979年東京生まれ
2004年より「川柳の仲間 旬」所属
「川柳スパイラル」会員
「かばんの会」同人
長野県在住



縦書き画像をご覧になるばあいは以下をクリックしてください
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2018年11月30日

内田真理子「いのこづち」を読む


いのこづち   内田真理子

私有地の大蒜六片十二片
古今東西薬草園の袋詰め


横書きで見ると、最初の句の「大蒜六片十二片」と最後の句の「古今東西薬草園袋詰」の「一」によって境域が感じられ、八句全体が一般世界から区切られた〈ゾーン〉のように思えてくる。また、縦書きで八句全体を見ると対称図形になっていることに気づくし、句語の「私有地」も「大蒜」も「薬草園」も「袋」も、よくよく考えれば一般世界から区切られた〈ゾーン〉を形成している。今回の群作で作中主体は、一般世界から区切られた〈ゾーン〉で動植物や赤子と触れ合い、川柳という作物を生んでいる。してみると、一般世界/川柳という境域性をも示唆されてくるのである。

ちなみにわたしは、薬用植物園で一人吟行をすることがある。そこは薬用植物ばかりでなく有毒植物も数多く栽培されているため、短歌文芸にはもってこいの場所なのだ。だって短歌は反社会性と相性がいいから。で、そこのケシ畑に行くと、複数の鉄柵で囲われている。園内でも特定ゾーンになっているのだが、それがかえって妖しい雰囲気を演出しており、わたしをいっそう作歌モードへと変換してくれるのである。

前もって聞き耳頭巾侍らせる


「聞き耳頭巾」は各地に伝わる昔話で、この頭巾を持つと動物の話が分かるようになる。「前もって」とあるから、作中主体は頭巾の働きをあらかじめ分かっているようだ。これは、動植物や赤子が一般世界とは違う〈ゾーン〉の住人であることをしっかり意識しているからではないだろうか。

村に鍛冶屋はいたのだろうか彼岸花

彼岸花の赤⇔村の鍛冶屋という連想が見てとれる。「村の鍛冶屋」は戦前からある唱歌。恥ずかしながら今回、「村 鍛冶屋」で検索して初めてこの歌を知ることになった。ただ、どこかで聞き覚えが。そうだ、幼いころよく流れていたキッコーマン・デリシャスソースのCMだ。「トマトに リンゴに ニンジン タマネギ グツグツ にこんで スパイス入れよ♪」という歌詞で、村の鍛冶屋の替え歌になっている。「彼岸花」の花言葉の中には〈転生〉〈再会〉がある。「村の鍛冶屋」はCM曲に転生し、わたしは久々にそのCM曲と記憶の中で再会できたわけである。

ちなみに、「ドリフ大爆笑」のオープニング曲も替え歌で、戦前の「隣組」が原曲だと知った。これも大人になってからのことである。 

大丈夫アンモナイトな地図がある

「アンモナイト」は、形象としては殻が地図の等高線を想わせるし、また実用としては地層の地質年代を特定する指標、つまり地図になる。八句目の「古今東西薬草園の袋詰め」の「古今」に注目するとき、「アンモナイトな地図」をとおして古生代〜中生代の生き物の声をも聞こうとする作中主体が想像でき、とても面白い。


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2018年11月22日

「川柳スパイラル」4号発行

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【川柳スパイラル4号・内容】
・巻頭写真  入交佐妃
・横断する渦  小池正博
・【ゲスト作品】初谷むい・青本瑞季・青本柚紀
・GAKKOの川柳な人たち  月湖
・同人作品 Spiral Wave
・【特集】俳句の現在・短歌の現在
 次に来る!?若手俳人  黒岩徳将
 吉田奈津論─変化ついて─  暮田真名
・会員作品 Plastic Wave
・現代川柳あれこれ Biotope  小池正博
・小遊星 連載第4回  飯島章友×八上桐子
・本格川柳小説 第四話 存在と字間  川合大祐
・現代川柳入門以前 読みのマニュアル  小池正博
・投句規定・合評句会案内
・【連句作品】 歌仙「剥落の」の巻
・【リレー・エッセイ】ここで生きていくのかな  一戸涼子
・妄読ノススメ  兵頭全郎
・川柳スパイラル・東京句会 大阪句会
・編集後記


今回の「小遊星」の対談は、ゲストに八上桐子さんをお迎えしています。八上さんの来歴、句歴、作句方法などいろいろお聞きすることができました。八上さんのファンの方には是非とも読んでいただきたいです。

会員・購読は小池正博に連絡をいれてください。
川柳スパイラル

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2018年11月15日

『細田洋二作品集』

川柳ジャーナル別冊『細田洋二作品集』(昭和48年)
編集人 松本芳味
発行人 河野春三

サルビア登る 天の階段 から こぼれ
角膜 島に移植して 来る夕日
渚の死木 月の傾斜を受信して
紅生姜一片残す夕焼 の秘密
言葉に言葉が跨がり ダイヴィングする淵
平仮名な睡眠を三枚に下ろす風
辞書ひいてレール病んでる 明けるなよ
腹話術 鏡となって鏡打ち
額から身銭を削り落とす月
エーテルな梢を辿る魚路



本作品集の河野春三の跋より細田洋二の言葉を引用しておきます。

「新しい言葉というものは、平凡な日常的な事実に新しい照明が与えられ、もう一度意味をもって出て来るために生まれてくる。即ち言葉が新しく生まれかわる。蘇生するのである」
「流動する現代にあって、先ず現在の状況の中における自己の価値意識を確立することこそ急務であり、非日常性を発くつし、道具的言語をよみがえらせ、沈黙の淵に沈潜し、そこから強い凝視に支えられた明確なイメージを獲えてゆく外は、言葉の復権、回復などあり得ない」

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2018年11月10日

川柳雑誌「風」110号

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川柳雑誌「風」110号
編集・発行 佐藤美文

今号は、第十九回風鐸賞の発表号でした。選考委員は木本朱夏、雫石隆子、新家完司、津田暹、成田孤舟の各氏。正賞、準賞ともに十四字詩から選ばれました。

結果は以下のとおり。
■正賞 林マサ子(12点)
■準賞 藤田誠(5点)・齋藤由紀子(4点)

各応募作品の十句から、複数の選考委員が選評で触れている句を引かせていただきます。

なぞなぞ解けて蕾ほぐれる  林マサ子
哲学してる秋のカマキリ
手の鳴る方へ靡かない老い  藤田誠
好きな匂いに弱いたそがれ
無駄話にも栄養がある

天下無敵になれるおばさん  齋藤由紀子

いずれも人生や生活をリズム良く十四音に乗せていて、さすがという感じです。いま、わたしの知るかぎり、十四字詩(七七・短句)を前面に押し出している柳誌は「風」のみですが、今後、十四字詩の書き手が増えて新しい世代が出てくると、また趣の違う十四字詩が出てくるのではないでしょうか。私的には、林マサ子さんの「なぞなぞ解けて蕾ほぐれる」に、これからの十四字詩の方向の一端が胚胎しているような気がします。

十四字詩といえば、現在、本間かもせりさんが以下で頻繁に作品を発表されています。

七七句(十四字詩・短句)

十七音の川柳も未開拓なことが山積みでフロンティア精神が刺激されるのですが、十四音の川柳はその存在が発見されていないに等しい状態だと思います。ですから、これからこの分野をきちんと認識し、確認したうえで、どう開拓していくか。有志で話し合って戦略を練らないといけないかなと思っています。その意味で、かもせりさんのご活躍はとても刺激になっているのです。

参考
【短句】誹諧武玉川の短句と近現代の川柳十四音【十四字詩】@
【短句】誹諧武玉川の短句と近現代の川柳十四音【十四字詩】A


posted by 飯島章友 at 22:00| Comment(0) | 柳誌レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする