2015年02月11日

勇気のための川柳処方箋A なにが起こるかわからない。

見覚えのない人に手を合わされる  久保田紺

  *

じんせいって、なにがおこるかわからないから、
おもしろいですよね。
わたしはさいきん大阪にいく機会があったんですが、
じんせいでおおさかにいくきかいがあるなんて
おもいもしなかったので、おどろいてしまいました。
おどろいたついでに、新幹線をまちがえて、
北上してしまい、大阪ではない場所にいこうとして
それもおどろいてしまいました。
大阪でおりたら、ブーケを多めにかぶったひとが、
わたしのまえにきて、手をあわせてきたので
それもおどろいてしまいました。
じんせいってなにがおこるかわからないから
おもしろいですよね、っていったら
そうでしょう、といってそのひとは
ほほえみ、もういちどてをあわせてきたので、
やるなあ、とおもいました。
わたしはそのまま、そのひとのまえを、
みおぼえのないひととして、みおぼえのないひとどうしとして、
たちさったのです。

たとえば、遅刻しそうでいそいでいるとき、たまにじぶんが浮いているときありますよね?
ひとってたまに浮くこともあるんだなあと
おどろいてしまいます。
はじめてスペースシャトルに乗った純真な初心者宇宙飛行士のようなきもちになって。

人生って、コーエン兄弟の映画みたいに
なにがおこるかわからないんですよ。
あした、あのひとからてがみがどっさりとどくかもしれないし、
あした、あのひとからじゃんじゃんでんわが
かかってくるかもしれない。

それもぜんぶ、みおぼえのないひとから
てをあわされる行為です。
わからないんですよ。これからなんて。
これを読みながら、あなただって、ほんのわずか
浮いてたりだって、するかもしれないし。2センチくらい。
ね。


posted by 柳本々々 at 22:24| Comment(0) | 柳本々々・一句鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

勇気のための川柳処方箋@ いっしょに、生きる。

干からびた君が好きだよ連れて行く  竹井紫乙

  *
この句の「連れて行く」をみてほしい。
「連れて行く」つもりなのだ。

どうして?

「君が好きだ」から。

どんな君でも?

そう、たとえ「干からび」ていても。

この句の語り手のきもちは、もう、決まっている。

「連れて行く」つもりなのだ。
たとえ、きみがずたぼろのがたがたのぼろぼろでも。
ひきずってでも、きみをつれていくつもりなのだ。
そう、いいきったのだ。語り手は。

だから、この句の勇気は、
きみがどんな状態になろうと、
あなたと共に生きることをこの句が決心しているところにある。
どこまでだって、あなたを連れてゆく。
連れてゆくということは、ともに生きようとすることだ。
だから、この句は、勇気をくれる。
どんなにだめになっても、あなたをみつけてつれていくひとが、あらわれる。
それは、あとからあとからあらわれる。
あなたがどんなにへたっても、ひからびても、可能性は
むげんだいなのだ。
それが、この句の、勇気!


posted by 柳本々々 at 22:06| Comment(1) | 柳本々々・一句鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

兵頭全郎の60句を読む

川柳木馬 第143号に
『兵頭全郎の60句を読む』が掲載されました。

まぁひねりのないタイトルのとおり、
兵頭全郎さん篇の60句を読んだものです。
原稿用紙10枚相当。60句には足りないかも。
でも足りないと感じるのは、1句1句に考え込むからで、
「全体をインプットして考えたのち取り出し
効果的に伝えることができないからかも」と思ったことでした。


同時掲載は
湊圭史さんの『ねじれの位置―兵頭全郎句の言葉の位相』でして、
森を俯瞰し思考する湊氏のかたわらで、森の切り株にけつまづく江口の図。

兵頭全郎さんの60句より。

イントロが途切れ寝殿造の密
戯画丸く盗む大吟醸の瓶
タンカーに横付けされるポテチ工場
つぼみまだプラスティックな薄緑
七万人入れる紙箱の折り方
日没をずっと見つめているかたち
美人画の額を湾曲する歌劇
墨汁で描いた蒼天乾くまで
虫かごの景色と気づくBGM
川に乗る?もっと都は燃えていろ

posted by 飯島章友 at 11:51| Comment(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする