2015年03月13日

勇気のための川柳処方箋38 落ちる。

大丈夫ストンと夜に落ちている  ひとり静

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M 『おかじょうき』2015年3月号からひとり静さんの句です。ひとり静さんの句の特徴として、やわらかい口語体というものがあるように思うんですが、そうしたマイルドな口語は、いつも読み手が話しかけられているように感じることでひとつの〈あたたかさ〉を生むように思うんですね。ことばの温度っていうのは、じつはそういうところにあったりするんじゃないかとおもったりします。

Y 読むということが語ることでも書くということでもなく、話しかけられるということになるということですね。たしかになんだか帽子をかぶろうとしたら鳩がでてきちゃったようなふしぎさとあたたかさがあります。

M はい。たとえばうえのひとり静さんの句なんですが、「大丈夫」と上5が始まっていますよね。これは二重の意味でだいじょうぶなんだとおもうんですね。ひとつめは、語り手が感じている〈だいじょうぶ〉です。語り手はどこかで〈だいじょうぶだろうか?〉と感じてた。でも〈だいじょうぶ〉だと思えた。だから自分自身に語った。「だいじょうぶ」と。そしてもうひとつが、読み手に対してです。〈だいじょうぶだろうか?〉という読み手に対して「だいじょうぶ」と語り始めることによって「だいじょうぶ」に読み手を措定する。

Y たしかにわたしはこの句を読んだときに、読み始めたとたんに安心感を感じてしまい、中七の「ストン」のあたりでわたしも夜に落ちて安眠してしまったくらいです。

M ええ、そんなひとも出てくるくらいにこの句には、安心感やセキュリティがある。いま中7で落ちたといわれたけれど、この句ではどうしてだいじょうぶかの理由が語られていますよね。「ストンと夜に落ちている」。夜の落ちるから、じゃなく、もう落ちているのがポイントだとおもいます。つまり、わたしのちからや意志ではどうにこうにもならないこと(ここでは「夜」)がわたしたちを逆に救ってくれるのです。

Y たしかに救われた気がするし、元気にもなりました。

M それはこの句で安心してしまって、ただたんにねむりすぎたからだとおもいます。

Y じつはまだかたあしは夢のなかに浸かったままです。

M はい。あなたにはときにこちらの世界に帰ってくる勇気もひつようですね。

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posted by 柳本々々 at 02:15| Comment(0) | 柳本々々・一句鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする