2015年07月20日

哲学者の空:200字川柳小説  川合大祐

哲人は人にものを問うたことがなかった。彼の思索の主軸は、問いというものは何かと考えることであり、それはついに問われないまま、彼は答えだけを出しつづけた。彼の答えは問いを前提としなかったから、正確であり、人々の心を蕩かすには充分だった。一時は預言者のようにもて囃され、愛した人を失くし、やがて忘れられ、サーカスの天幕で命尽きるとき、哲人は団長に問うた。「空は、本当にあるのだろうか」。答えは、なかった。

  空見てるそこに答えがあるように  ひとり静(『月刊おかじょうき』2015年3月号より)

posted by 川合大祐 at 05:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする