2015年09月20日

蛇の穴:200字川柳小説  川合大祐

白い障子を裂く。黒ぐろとした穴を覗けば、そこに蛇がいた。うつくしい蛇のからまりだった。なめらかに、複雑に、生なましく、蛇がとぐろを巻いていた。その時から少年は、言葉について考えるようになった。この世界で呼ばれているものは、そのもの本体の名前ではないのではないかと。世界をめくってみれば、もの、というものの本質に辿り着けるのではないかと。旅に出たかった。出られなかった。蛇の名前は〈母〉というのだった。

 美りっ美りっ美りっ お言葉が裂けている  中西軒わ(第3回川柳カード大会・題「美」準特選句より)

posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする