2016年04月17日

マリアの子:200字川柳小説  川合大祐

病院にいつも持ち歩いている石鹸を忘れてきてしまった。ない、と思えば電車の吊革がおそろしく、やや混み始めた車内で、サーファーのようにバランスを取って立っている。この世には汚いものが多すぎる。何が汚いと言って、つまりは人間が汚いのだろう。人の群は雑菌を媒介するメディアにしか見えない。ならば、その源はどうだ。人の元、いわゆる母は、最も不潔なものではないか。我慢できず下り線に乗り換えた。母のいる、病室へ。

  石鹸を母の陣地に盗りにいく  榊陽子(「川柳カード・11号」より)

posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする