2016年07月10日

たとえようもなく:200字川柳小説  川合大祐

朝陽のような朝陽が昇った。毛布のような毛布から這い出て、蚊のような蚊を見ていた。遠くのような遠くから犬の鳴き声のような犬の鳴き声が聞こえてくる。カプセルホテルのようなカプセルホテルを後にした。まるで街のような街を歩いた。囁くような囁きがずっと続いていた。行かなければならなかった。駅のような駅で電車のような電車に乗った。この街に、比喩はないのだと知った。車両の人間が皆、人間のような顔をしていたから。

  足立区のような所に行きました  松木秀(「月刊おかじょうき」2016年6月号より)

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2016年07月03日

アット・ホール:200字川柳小説  川合大祐

穴があった。米国エリア51から7万キロ離れて、穴があった。ある者は、これはナゴヤドームがあった跡だと主張し、ある者は、これは神々の痰壺だと主張し、またある者は、そもそもこれは穴でさえないのだと主張した。様々な主張が交錯するなか、ついに武器を手に取る暴徒まで現れた。一触即発のバリケードの間を、ひとりの人間がやって来て「すみません、それは私の鼻の穴でした」と穴を拾って去った。穴のあとには穴が残された。

  すみませんそれは私の鼻の穴  徳永政二(「かんにんして」より)

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2016年07月01日

かんにんして   徳永政二


頭から突っ込んでくるさようなら

お見せする両手の中にある顏を

ぶら下がるためのひっぱるための紐

すみませんそれは私の鼻の穴

笑わせてくれるじゃないか洗面器

まんじゅうはうまいあなたはやわらかい

さあどうぞとんぼの翅のところまで

花ひらくようにかんにんしてほしい



【ゲスト・徳永政二・プロフィール】
1946年香川県生まれ 滋賀県守山市在住
びわこ番傘川柳会「川柳びわこ」編集人
川上三太郎賞 大野風柳賞 川柳Z賞「風炎賞」
フォト句集1『カーブ』 2『大阪の泡』
3『くりかえす』 4『家族の名前』


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かんにんして.gif


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