2016年12月15日

【生き抜く川柳 ⌘ 川合大祐『スロー・リバー』を読む 3】

第4回 貧しさ、その愛と弔い

小津夜景


さて「生き抜く」ことに執着する川合大祐の川柳は、たえず死への言及をやめません。

今日もまたじょぴを墓場に埋めてやる  川合大祐

この句の人物は、とても変わった星に住んでいます。彼は埋葬人として「じょぴ」という、なにかよくわからないものを埋め続けているのでした。

毎日「じょぴ」は死にます。そのたびに彼は「じょぴ」を埋めてやります。このどことなく恥ずかしくみすぼらしい名を負う「じょぴ」を彼が埋めてやることに、いったい何の意味があるのでしょうか?

わかりません。

唯一わかるのは「じょぴ」が、ただ彼によって弔われる為に存在するということ。

その意味で彼と「じょぴ」とは相即不離の間柄なのでした。

「人でなしばかりの国で椅子になる」の「椅子」がそうであったように、この句の「じょぴ」も意味秩序の転倒や異化ではなく、ただ「じょぴ」という音が抱える《貧しさ》に胸を衝かれることがおそらく作者の狙いです。またそれは《貧しさ》と相即不離の自分自身を思い知ることでもありましょう。

《貧しさ》を手厚く埋葬する(それは愛の身ぶりでもあります)ために毎日を生き抜くこと──もしかすると「ぐびゃら岳じゅじゅべき壁にびゅびゅ挑む」における珍妙な音もまた、この世界の《貧しさ》との愛憎この上ない格闘を含意していたのかもしれません。

(次回につづく)

posted by 飯島章友 at 20:00| Comment(0) | 川合大祐『スロー・リバー』を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする