2017年02月03日

1ぽ ぽがいっぱいはえるかんじ 安福望ぽ×柳本々々ぽ−田島健一句集『ただならぬぽ』から−

安福 「これまで書いてきたものは、結局書けなかったものの堆積なのかも知れない」って『ただならぬぽ』のあとがきに書かれてるんですよ。

柳本 へえおもしろいですね。そもそも、挫折したところ、〈去勢〉されたところからはじまってるんだ。「ぽ」には苦(にが)みもあるんですね。

安福 やぎもとさん、挫折と去勢、好きですね。

柳本 うーん、さいきんなんか自分のテーマってけっきょくそれなんじゃないかと思ってるんですよ。

安福 あとがきで、「私の息切れや痙攣のような一句一句を」とも書かれてます。この句集、「息のおわり」っていう連作でおわりますね。

柳本 ああ、息とも関わりがあるんですね。そういう長さをもったものと、でも逆の、息切れとか痙攣の瞬間的な短さとも関わりがあるのかあ。あんまり、「ぽ」でなんでも語っちゃダメなんですけど、そういうすべてもろもろをひっくるめると、もう、「ぽ」としか言い表せないような気がしますね。まだ、それをいいあらわすことばはこの世界に生まれてないから。

安福 俳句だけど、よみやすいなっておもいました。

  人に見られるまでシンメトリーの桃  田島健一

ってあるんですけど、

柳本 ああはい、

安福 あと、

  いんげんまめ家に知らない人がいる  田島健一

なんか川柳の読みやすさがあると思いました。

柳本  ああ。なるほど。ぶきみですね、どっちも。

安福 ほんとですね。

柳本 田島さんの句ってぶきみさがあるとおもいますね。もし現代川柳につうじるとしたらそこなんじゃないかな。

安福

  回し見る桃にちいさく起こる風  田島健一

もありました。あ、でもこれなんか俳句っておもいましたね。

柳本 すぱっと切ってある感じがするからかなあ。「風」で。あの、今までの句、なんか、起きてますよね。タルコフスキーの映画みたいに。なんかが、起きる。俳句ってしずかな文芸だと思うんですけど、だけど、田島さんの俳句のなかでは、なにかが起こる、ってかんじがするんですよ。なんか独特の起こり方。でも、俳句でも川柳でもないような起こり方な気がするんだけど。ぽ、ってなんかが起きるときの音ですよね。

安福 俳句は起こったあとのことをあらわすんじゃないですか。

柳本 ああそうですね。田島さんの俳句では起きていることをあらわしている気がして。だから、「ぽ」。「ぽ」っと起こる。ひかりでも、いきでも、ことばでも、風でも。俳句は起こったあとのことを描いて、川柳は起きているときのことをあらわすのだとしたら、なんかそういう両方のことを想起させるのが「ぽ」なんじゃないかとおもって。それって、〈ただならない〉ことですよ。安心して暮らしてるひとにとっては。

   170203_170734.jpg

柳本 これやすふくさんが撮ってくれたんですが、おもしろい写真ですね。この芽の〈ぽ〉感が、すばらしい。

安福 その下の芽のやつは、私の昔の作品ですよ

柳本 え、そうなんだ。いろんな才能あるんですね。これおもしろいですね。なんか、〈ぽ〉のひとつのコンセプトが造形化されてるきもするけど。そうかあ、発芽かあ。

安福 アマゾンの箱に生えてるんですよ。

柳本 ええっ。Amazonの箱。やるなあ。

安福 なんかそのころ、アマゾンの箱、なんかにつかえないかなあっておもって。

柳本 Amazonの箱って、なんかアートにちかづくっていうか、なんか生まれますよね、ダンボーとか。

安福 あと白鳥と黄色い花の箱がありますよ。アマゾンの箱ってふたがあるから、それがいいなあってなんかできないかなって思うんですよね。

柳本 Amazonの箱って生態系をつくるんだね。〈ぽ〉って生態的なんだなあ。ぽって生態がはびこることなのかもしれませんね。句集タイトルの「ただならぬぽ」ってすると、「ぽ」がいきものめいてくるし。

安福 そうですね。ただならぬ、だから、なんか妖気を発してるかんじ。

柳本 田島さんの句でも白鳥を定食にしちゃう白鳥定食の句とか芭蕉がふたりになったりする句があるんですけど、生態がただならぬ生態系なんですよね。なんかね、生態系的なんですよ。その意味で、「ぽ」はあらゆる生態系の始原というか。なんか、まずはじめに「ぽ」ありき、なんじゃないかと思います。はじめに言葉ありき、じゃなくて。聖書のね。これ、ただならぬ「ぽ」のひとつの造型って感じしましたね。

安福 ぽがいっぱいはえるかんじね。

柳本 なんかこう、田島さんの句っていろんな入り方がある気がするんですよ。視覚から考えたらぽはどうなんだとか、造型から考えたらどうなんだとか。ある意味、どこかで、ラフなかんじでむきあうことをゆるしてくれる句集かもしれないなともおもうんですよね。なんかこの芽Amazonをみたときに、ふっと、そうおもったんです。俳句の全方向化というか。

安福 芽アマゾン(笑)


posted by 柳本々々 at 18:51| 川柳サロン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする