2017年03月11日

才能から考える古畑任三郎 安福望×柳本々々−ファーストシーズン第9話「殺人公開放送」(犯罪者:黒田清【霊能力者】=石黒賢)

安福 この回は超能力の、もっというと、才能の話なのかなあっておもったんですよ。じぶんに才能がないってことをみとめられないというか。なんかでも古畑さんがやさしいのもきになったなあ。

柳本 ああ。これ同時にメディア論だともおもったんですよね、この話。才能ってメディアともかんけいしてるって。メディアによってやめられなくなってたわけですよね、石黒賢は。

安福 あ、そうですね。

柳本 だけどうまいこといけばちがうほうこうにもいけたんじゃないかとおもって。

安福 たしかにね。

柳本 メディアはいちおう味方してるんだから。

安福 ほんとですね。むかしはほんとに力があったんだよっていってたじゃないですか。なかったかもしれないけど。でも二十歳すぎてからなくなってっていってて。そこでやめずに、いたんですよね。なんかすごいなっておもったんですよ。自分は特別なんだって思い込みで、二十歳からはずっとやってきたんですよね。もしかしたら最初からずっとそうだったのかもしれないけど。古畑さんって過去がよくわかんないじゃないですか。なんか似たとこあったのかもってなんかちょっとおもった。なんでかわかんないですけどね。
だから二十歳までは能力があったっていうのも、さいごに「そういうもんです」みたいなこと石黒賢にいってて、それは自分もそういう道とおったよってかんじになんかやさしいかんじにおもったんですよね。

柳本 ぎゃくにじぶんじしんをだましていたのかもしれないですよね。
だけど二十歳になって万能感もきえてだましきれなくなって、こんどは外側をだますようになったというか。

安福 ああ。

柳本 あの今回の事件の鍵になってる犯人がかけてたサングラスで色がちがってみえるって。結局こころのサングラスをずっとかけてたってことなんじゃないですかね。だから、もともとサングラスをずっとかけてるみたいに、ずれてたんじゃないかって。悲劇があるとしたら、それってこころのサングラスなんじゃないかとおもうんですよ。

安福 ああ、ほんとですね。

柳本 でもそれでもあなたにはなんらかの魅力があるからいっしょにちょっとそれさがしてみようっていってくれるひとがいなかったことじゃないかな、今回の石黒賢の悲劇って。
サングラスをはずしてくれるひとがいたらこんなことにならなかったかもって思うんですよ。そもそもサングラスって心理的防衛ですよね、世界をちゃんとみないようにするための。

安福 ほんとですね。

柳本 むしろサングラスによってじぶんにマジックをかけてますよね。だからはじめて古畑がそのサングラスをはずしてくれたんじゃないかっておもうんですよ。

安福 ああ、そうですよ。
柳本 あのレザージャケットも防衛だとおもうな。あれってさわれないでしょひとが。指紋がつくから。さわるなってことだとおもう、じぶんいがいは。

安福 あのひと強烈に孤独ですよね。

柳本 だけど古畑が証拠としてそれをぬがせるわけでしょ。

安福 あっほんとだ。

柳本 だから古畑が武装解除したんだとおもうんですよ。

安福 なるほどなあ。

柳本 だからこそ、あのラストシーンでね、ためせたんだとおもうんですよ、じぶんのほんとのちからを。だってふつうは失敗するのこわいでしょ。じぶんで自覚してあきらめなきゃならなくなるから。

安福 ああ、だから、二十歳からちからなくなったこともいえたんだなあ。

柳本 だけど古畑の前ならっておもえたんじゃないかな。だめだったけど。だけどわかったわけだよね。あれであきらめることができましたよね。これからはちがう生き方ができる。
おっちよこちょいの神戸浩の大道具が落っことしちゃって重たいものがおちてきた。霊能力の仕組みなんてほんとはそれくらいでしかないって。

安福 ほんとですね。

柳本 この回はメディアの回だけど、テレビ番組だから、だからメディアってどんどん価値観がわかんなくなるけど、ただしさとかまちがいも、でもああいう1対1の会話でふっとちゃんときづいてしまうこともあるっていう。

安福 ほんとですね。

柳本 だからあの犯人にとってメディアって、サングラスだったんですよね。

安福 ああ、そうかあ。

柳本 ただ目元にあったからきづかなかった。

安福 じぶんじゃきづかないんですね。

柳本 この回のラストシーンの音楽ってすごく印象的じゃないですか。本間雄輔さんの。本間さんは『世にも奇妙な物語』の音楽もつくってるけど、それっぽい音楽ですね。なんか超越的な。超能力的な。
で、ファーストでつかわれてた音楽ってセカンドからつかわれなくなってますよね。この音楽だとカウンセリング色がつよすぎるのかもしれませんね。超越的な。ちょっと宗教曲みたいになってますもんね。神様ソングみたいな。

安福 このものおちるとことか、なんか音楽がこんなになるんだっけなっておもいました。

柳本 スタジオの天井じゃなくて、天からおちてきてるかんじしますからね。

安福 ああ、しますね。

柳本 この曲のせいで神戸浩さんのたどたどしさが聖性をだしてるっていうか、天使みたいになっちゃってますよね。

安福 だしてるだしてる。

柳本 セカンドの古畑は明るくなるんだよね。はじけるというか。それでサードはほとんど神様というかご宣託をいうだけになる。

安福 そうなのかあ。

柳本 セカンドはじっさい外がおおくなるから外のひかりをあびるようになる。木村拓哉の遊園地の回とかそうですよね。

安福 あっそうかあ。

柳本 そもそも古畑って初期設定は暗い設定だったんだよね、公務員的で黒縁眼鏡の。まじめで実直な。だけど田村正和がこういうスタイルでいきたいっていって、今のスタイルになったらしいんですよ。

安福 へーそうなんだ。

柳本 そもそも古畑も防衛はあるはずですよ。だってずっと黒い服っておかしいでしょ。おなじ髪型で。

安福 あっほんとですね。あっだからやっぱり石黒賢とにてるっておもったんだよ。なんか。

柳本 だから古畑だってこころのサングラスもってるはずですよ。あとやっぱりオープニングが、なぜかれはこの暗いばしょでひとりでしゃべってるんだろうってふかしぎさはあるよ。

安福 ほんとね。あれへんだよね。だれにむかってはなしてんだろう。まわりだれもいないですよね。

柳本 解決のまえもしゃべりますよね。最終回でだれとしゃべってるんだっていわれるんですけどね。そうしたら、こっちをみて、こちらの方って視聴者をゆびさすんだけど。結局石黒賢みたいに古畑もオーディエンスにむかってしゃべってるてんでメディアのひとではあるんですよね。超能力少年というか。超能力中年。

安福 そうね。古畑さんってなんかもうあきらめてるようなかんじがするんですよ。じぶんはこうでしか生きられないみたいな。

柳本 それは間と笑顔じゃないですか。古手川祐子のときに間をおいてにっこり笑顔をみせてたけど。

安福 間と笑顔かあ。

柳本 今泉にはそれないですよね。今泉ってあかるいけど、間と笑顔がないですよね。

安福 ないですね。

柳本 間と笑顔があるの犯人と古畑だけですよ。間って内面なんですよ。笑顔はその内面の受領。
間+笑顔=諦念
ですよね。

安福 ああ、なるほど。間って内面なのか

柳本 ひとと会話してるときにぽんぽん返事しないでちょっと間をおいてから返事するとドラマチックになりますよ、無意味に。そしてそのあとににっこりほほえめばさらに無意味にドラマチックになりますよ。

安福 おもしろいですね笑

柳本 間って、むずむずするんですよ。あとドラマをつくるんですよね。だから芸人のひとが笑いをコントロールするのに間をつかうんだとおもう。島田紳助もビートたけしも笑いは間だっていってたとおもう。

安福 ああ、なるほどー。

柳本 北野武映画って間の映画ですよね。間が暴力になってるのが北野武映画だとおもうんですよね。

安福

柳本

安福

柳本

安福 あっ、そっかー。

柳本 …………。


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安福望:古畑任三郎「殺人公開放送」の絵

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柳本々々:古畑任三郎(♀)の絵
 
posted by 柳本々々 at 21:55| 川柳サロン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする