2017年04月09日

初期の終わり:200字川柳小説  川合大祐

まさか世界が終わるとは思っていなかったので、靴下を干しっぱなしにしたまま出勤してしまった。空は当然のように黒雲である。駅から家に続く、まっすぐで液状化した舗道には、整然と人々が上半身を突っ込んでいた。下半身がむき出しの状態だから、各々の靴下がよく見えた。ムエタイの、百合姫の、ロボット三原則の柄の靴下が並び、ぬかるむ道をやっと家まで辿り着いた。物干場に出ると、靴下が片方、どこかへ行ってしまっていた。

  靴下がやっと乾いたという敬愛  樋口由紀子(「川柳カード」14号より)

posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする