2018年01月25日

「晴」第1号

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「晴」第1号
編集発行人 樋口由紀子

ゴルゴダのその日の出口調査員  きゅういち
死なないと死ぬの間の朝ごはん  松永千秋
殺された場所へ戻っている鸚鵡  月波与生
靴下を三枚はいて棒を持ち  広瀬ちえみ 
両手の中に残る海鳴り  水本石華
空腹でなければ秋とわからない  樋口由紀子

昨年「川柳カード」が終刊したのち、「うみの会」という川柳句会を立ち上げて活動していた樋口由紀子さんだが、ついに同人誌を旗揚げした。その名も「晴」。メンバーは樋口由紀子の他に、きゅういち、月波与生、広瀬ちえみ、松永千秋、水本石華の6名。とくに同人や会員、購読会員を募集しているようではないので、固定メンバーだった「MANO」誌と同じような形態で活動していくのかも知れない。

動こうと決断すれば、早かった。私の出来る範囲のことをやればいいのだと開き直った。メンバーもすんなりと決まった。広瀬ちえみさんと松永千秋さんは長年の親友であり、頼りになるおねえさんたち。水本石華さん、きゅういちさん、月波与生さんは、それぞれの柳誌や各分野での活躍に注目していた。作品とエッセイを読んでいただけたらおわかりだと思うが、メンバーはおのおの見ているものも、見ている方向も同じではない。そこから「晴」のカラーが作り出せたらと思っている。

後記にはこう記されている。
シニアの趣味の集まりが大半の吟社・同人川柳において、高いレベルでの表現活動を行うとしたら必然、少数での活動を覚悟しなければならない。6名でのスタートであるが、6が2乗にも3乗にも4乗にもなっていくことを期待している。



posted by 飯島章友 at 23:00| Comment(0) | 柳誌レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月06日

渥美清の俳句

昨年(平成29年)の年末に『風天フーテン 渥美清のうた』(森英介/大空出版)を読んだ。渥美清と俳句とのかかわりについて取材した一冊だ。渥美清が俳句をしていたことは知っていたが、彼の俳句作品については何も知らなかったので興味深く読んだ。諸事情で実現はしなかったものの、渥美清が種田山頭火を演じる話もあったそうだ。寅さんと山頭火。通じ合うところがありそうだ。

書名にもあるように、渥美清の俳号は風天。無論、フーテンの寅に由来する。彼は「話の特集句会」「トリの会」「アエラ句会」「たまご句会」など、愛好家中心の句会に参加していた。週刊誌「アエラ」の編集部に外部の人間も加えた「アエラ句会」では、定刻の三十分前に来て静かにじっとしていたという。また大船撮影所から間隙を縫ってタクシーを飛ばして来て、終わったらまたタクシーで撮影所へ戻っていったこともある。寡黙であり、みんなが飲酒しながらガヤガヤやっている部屋の隣で、ひとり壁に向かい想を練っていたとも。

風天が入選句を読みあげると、どんな駄句も名句に聞えたという。役者でも、朗読やナレーションが不得手なひとはいっぱいいるものだけど、渥美はテキ屋を手伝っていたこともあるし、「男はつらいよ」での口上・啖呵を想えば披講で座を魅了したことは容易に想像できる。

 わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です
 帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎
 人呼んでフーテンの寅と発します

 四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い
 四谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れるお茶ノ水
 粋な姐ちゃん立ちションベン

同書には、俳人の石寒太による「風天俳句全解説」も掲載されている。なので、俳句の門外漢であるわたしにも大変分かりやすかった。

つぎの十句はわたしが気に入った風天の作品。句が作られた年と月、それと句会名も記しておく。

コスモスひょろりふたおやもういない  S48.8 話の特集句会
好きだからつよくぶつけた雪合戦  S48.11
いま暗殺されて鍋だけくつくつ  S50.6
ひばり突き刺さるように麦のなか  〃
そば食らう歯のないひとや夜の駅  H4.11 アエラ句会
花びらの出て又入るや鯉の口  H5.3
乱歩読む窓のガラスに蝸牛  H6.6
お遍路が一列に行く虹の中  〃
だーれもいない虫籠のなかの胡瓜  H6.9 たまご句会
髪洗うわきの下や月明り  H8.3

二句目の「好きだから〜」は、何かドラマのワンシーンを想わせる。実際わたしは、小学校を舞台にした田村正和主演の「うちの子にかぎって2」第9話で、まさにこのようなシーンがあったのを憶えている。主人公の少年がクラスメイトと雪合戦をしていたとき、彼がひそかに慕う少女へ雪玉を強くぶつけるシーンがあったのだ。
六句目の「花びらの〜」は、風天作品すべての中でもっとも描写力、あるいは写生力に優れた句だと思う。詠まれている状景はまったく違うが、「湧きいづる泉の水の盛りあがりくづるとすれやなほ盛りあがる」(窪田空穂『泉のほとり』)に劣らない眼の力を感じさせる。
七句目の「乱歩読む〜」は、力の抜き方が上手いなと思う。句会で採られるために意気込むと、乱歩という言葉からついつい耽美的な方向やおどろおどろしい方向へ展開してしまう危険もあるのだけど、この句では窓ガラスの「蝸牛」へさらりと視点を移している。風天作品の中でわたしがいちばん好きな句だ。
八句目「お遍路が〜」は、風天の代表句。2000年2月、『カラー版新日本大歳時記』(全五巻)の春の巻に掲載された。
十句目の「髪洗う〜」は、江戸時代の情緒とも通じるものがあるなと思った。たとえば、江戸時代の高点附句集『誹諧武玉川』の四篇には、「洗髪あらいがみ)/rp>脇の下から人をよび」という句がある。ただし、この風天句が作られたのは、彼が最後の入退院を繰り返していた時期だという。それを知ると単なる情緒では終わらない。

「男はつらいよ」シリーズは、わたしが生まれる前から公開され、主に中高年が楽しみにしていたシリーズというイメージもあって、自分にはあまり関係のない映画なのかな、と感じていた。でも、年を重ねるごとにわたしも頭が柔軟になり、面白い作品なら古い・新しいに関わりなく観るようになった。寅さんの映画も折にふれ観かえしている。渥美清=風天の俳句を読んだ今、次に「男はつらいよ」を観るときは、きっと新しい楽しみ方ができる気がする。

2018年01月01日

白い磁場   加藤ゆみ子


ストローの先でつんつん冬を突く

鍵盤に溺れたままの白い指

伏せの形で等圧線の底に居る

石もて追われた古里が恋しくて

雑踏のコドク半径五メートル

愛ならば象形文字で伝えてよ

人ひとり生きた証をのこす磁場

溜め息をついては白を深くする



【ゲスト・加藤ゆみ子・プロフィール】
川柳研究社幹事・川柳文学コロキュウム会員・
川柳宮城野社同人・川柳べに花クラブ同人
ユーキャン川柳講座講師
神奈川県横須賀市在住。



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posted by 飯島章友 at 00:00| Comment(0) | 今月の作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする