2018年11月03日

現代川柳ドリル6 はっきりと思い出せないX構文/柳本々々

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【例句】はっきりと思い出せない猿の足/樋口由紀子

【適当句】はっきりと思い出せない力士の目

【ポイント】
*むずかしめ。そもそも思い出せそうで思い出せそうもないものを穴埋めするので、わりとむずかしい。しってて・しらないこと。じぶんの内部、なにをおれはわすれていたんだっけなあ、なにをおもいだせそうなんだっけなあ、に降りていくひつようがある。
*そういうふうにかんがえると、川柳は、思い出せそうで・思い出せないなにかをさがす、わすれてたのに・わかってたことをさがす、じぶんのなかに降りていく精神分析的なものかもしれない。
*特に樋口さんの句は、自分や世界がふだん忘れていたものをさがしあてるような精神分析的な句がおおいかもしれない。
*これは俳句が唯物的で、川柳が唯心的なところにもちょっと似通っているかもしれない。「猿の足」はモノなんだけれど、それが「思い出せない」に回収されることによって、こころの問題、なにか大事なものを忘れていることの喩え、唯心論になっている。
*川柳がどうしてカオスなのかといえば、それは精神分析だからです、と答えることもできる。
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現代川柳ドリル5 AはBに似ている絶対似ている構文/柳本々々

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【例句】妖精は酢豚に似ている絶対似ている  石田柊馬

【適当句】ピーマンは汽笛に似ている絶対似ている

【ポイント】
*ちょっとあたまをクレイジーにしてAとBをできるだけ離してみよう。不思議の国の帽子屋になったようなかんじで。アリスに話しかけるようなかんじで。
*でも「わたしは恋人に似ている絶対似ている」とかそういうストレートな想いでもそれはそれでいい。だれも否定できない。
*小池正博さんは、川柳は断言の文体、と言っていたが、この句にはその断言の究極のかたちがあらわれている。
*劇作家の岩松了さんは、表現とは、みんながポストを赤い、というなかで、それでも、ポストは青い、ということだと言っている。つまりちょびっと狂気。
*この句をみていると川柳はベーシックな部分でカオスなんだなあとおもう。でもそのカオスを支えているのが構文。川柳は、コンテンツはカオスで、そのコンテンツを支えるメディアはコスモス。混沌と秩序。


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2018年11月02日

現代川柳ドリル4 異邦人構文/柳本々々

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【例句】今日ママンが死んだ 迂回路をさがす  内田真理子

【適当句】今日ママンが死んだ 宇宙から光

【ポイント】
*やはり図解鑑賞で取り上げたんですが、好きな句なのでもういちど。感想はしつこいほうがいいとおもいます。
*「今日ママンが死んだ」はカミュ『異邦人』冒頭の文。主人公は太陽のせいで殺人を犯します。動機:太陽。
*句またがりなのであてはめるのは8音です。
*ちょっと難しい穴埋めかもしれません。じぶんで適当句をつくっているときにちょっとあきらめそうにもなりました。大事なことは、文学からの引用を句に用いたときにその引用とどんな距離をとればいいのかということだとおもいます。そばに近寄りすぎず、遠く離れすぎず、という人間関係を学ぶのが引用を用いた句なのかもしれません。
*大学のとき友達の女の子に「今日ママンが死んだ」というメールを送ったら「えーかわいそう。だいじょうぶ?」という返事がきたことがあります。

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現代川柳ドリル3 いるところ構文/柳本々々

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【例句】あたたかい拍手もらっているところ/弘津秋の子

【適当句】ぽろぽろと涙鳴らしているところ

【ポイント】
*図解鑑賞でも取りあげたんですが、好きな句なのでドリルにも持ってきました。
*どんな「今」にしたいか、どんな特別な「今」があるか、あてはめていくうちにどんな「今」になっちゃうかをかんがえてみましょう。
*上田信治さんの俳句に「今走つてゐること夕立来さうなこと」という今をかんがえる句があります(『リボン』)。これも、今コト構文になりそうです。
*秋の子さんの川柳は、ひとの善があちこちにあふれているところがいいです。川柳って悪意がパワーになってるんですが、善意もパワーになります。
*秋の子さんから以前楽譜のコピーをいただいたことがあります。この拍手は歌うひとならではの「今」なのかもしれません。死ぬときまでひとにはずーっと「今」があります。死ぬときまで持っていける構文です。
posted by 柳本々々 at 20:23| 柳本々々・一句鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

現代川柳ドリル2 Aが好きでB大好きで構文/柳本々々

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【例句】黄昏が好きで悲しさ大好きで/竹井紫乙 

【適当句】ガンダムが好きでお日さま大好きで

【ポイント】
*AとBをぜんぜん違うものにすると不思議な味が出たりする。
*でも「恋人が好きで恋人大好きで」とかでもかえってなんだかそれはそれで強度があって、いい。
*好き好き構文、と呼んでもいい。
*わたしはどこかで川柳は構文芸術だともおもっていて、だからAI的だとも思っています。つまり、AIが文学を書き始めたらどうしよう、というよりは、そもそもが川柳はAI文芸だったんじゃないかとも思うんです。ロボットに負けたくない、とかではなくて、そもそもがロボット的だったんだと。だから、未来があらかじめ埋め込まれていた表現様式といえるかもしれません。ロボットが放つことばを先取りしていた。
*しおとさんの川柳はいろんな好きの位相をおしえてくれるから好きです。






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