2015年05月30日

勇気のための川柳処方箋91 なかゆびの詩学

枝豆で角度がリリー・フランキー  榊陽子

M こないだ大阪でひらかれた川柳フリマの川柳投票企画でいちばんだった句です。投句された句、どの句もおもしろいのでぜひリンク先ごらんください。今回はこないだの川柳フリマで投句された句からいくつかを任意でみてみましょう。

Y 榊さんの句。こういわれてみるとリリーさんと枝豆ってちょっと似ていますよね。石田柊馬さんの食べ物の句でもよくおもうんだけれど、川柳の詩学のひとつに〈類似の発見〉というのがあるかもしれませんね。なにかそういうのはフーコーの『言葉と物』からも考えられそうな気もする。かつて占星術がそのまま世界の運命だったように〈類似の原理〉が世界を支配していたんだけれど、セルバンテス『ドン・キホーテ』の時代になると〈類似の原理〉が効かなくなってしまうというあれです。風車=ドラゴンではなくなってしまう。

M 柊馬さんの句もありました。

うるわしき豚バラ肉や五月来る  石田柊馬

Y 食べ物で切れ字が入ってくるっておもしろいですね。「うるわしき豚バラ肉」といわれ、そこでとつぜ切れられて、読み手はほうりだされるわけですが、そのダイナミクスがおもしろい。うるわしいと豚バラ肉の組み合わせもおもしろいですね。類似といえば蟹口さんのこんな句もおもしろかったです。

台所の床はすなわちヘブライ語  蟹口和枝

「すなわち」っていわれちゃうと有無をいえないから、こまっちゃいますよね。でもいわれてみるとそんなきもしてきます。類似の発見です。

M こないだの川柳フリマは短歌の方も参加されていました。たとえば、じゃこさんの句。

アザラシを踏んだらちょっと餡子出た  じゃこ

Y これ最初わたし餃子(ぎょうざ)かとおもったら、あんこだったんですね。そういう〈ゆれ〉もいいなとおもいました。アザラシを踏む、という質感がこわいですよね。川柳の詩学のひとつに、いままでだれもやってこなかったことを〈やってみる〉という、〈やってみる詩学〉があるかもしれませんよね。

M 青森・秋田などの東北から『おかじょうき』の方々も投句されていました。

それよりさ裏口の靴隠したよ  一帆

怪談を聞きたくないか夏みかん  徳田ひろ子

天国と春の違いを考える  月波与生

幸せの取説くらい読めたのに  三浦ひとは

神様に一番遠い蟻である  三浦蒼鬼

Y 一帆さんの「それよりさ」って、「それよりさ」ってくだけた口調のひとはたしかに「裏口の靴」を隠してしまう気がしますね。「それよりさ」って話をずらしてしまってるのが気になります。しかもずらしたわりに大胆な告白をしてますね。ひろ子さんの句もたぶん夏みかんは怪談をきくのをいやがってるかんじがしておもしろいですよね。

M ねじまき句会の方々も投句されていました。

反対の電車 出る気のない電話  八上桐子

まあいいかどんどん青くなっていく  妹尾凛

Y ねじまきの方からピクトさんのシールとテープをいただきました。帰りの飛行機で、わおみどりのひとだ! とおどろいてしまいました。ありがとうございました。またひとつ非常口をいただいてしまいました。

M 八上さんと妹尾さんの句の〈まあいいか加減〉がいいですよね。「出る気のない電話」や「まあいいか」といいながら「青くなっていく」かんじ。ねじまきの〈まあいいか〉から始まる詩学を感じます。なかはられいこさんの緑のひとと森にいく句も、〈まあ行ってもいいか〉という感じがしましたもん。

Y 紹介できなかった句でおもしろい句たくさんあるんですが、ずっとこうやって現代川柳みていると、もうどんどんじぶんが解体されていくかんじありますよね。こないだちょっとおもったんですけど、表現ってなにかをいうためにやっているんじゃなくて、ともかくじぶんが解体されていくために、つかまっているねばねばした概念をhきはがしていくためにやっていくんじゃないのかなってちょっとおもったりもしたんですけれど。

M 川柳の詩学のひとつにたぶん〈解体〉がありますよね。じゃあ〈解体〉の句でおわりにしましょう。

解体をされる 中指一本で  藤田めぐみ


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posted by 柳本々々 at 01:43| Comment(0) | 柳本々々・一句鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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