2015年06月25日

木曜日のことのは蒐集帖A 首から上が蠅

その男さみし首から上が蠅    西原天気 (はがきハイク 第12号)

わ!と思わず首をすくめた。

「その男さみし」という端正な表情の言葉につづく、「首から上が蠅」という口調と意味の転成。いいはなしておさめて、定型っておもしろい。

キメラの図なんだろうか。キメラの語源はキマイラで、異なるものの合成という意味合いでひろく使われているようだ。有名なギュスターヴ・モローの『キマイラ』の絵では羽根の生えたケンタウロスみたいなきれいで無表情の生きものが描かれているけれど、もともとのキマイラはライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾というからおそろしげである。ピカソのミノタウロス、ボスの怪物、スフィンクス、西欧には様々なキメラの発想があるけれど、日本にはあるのか、ちょっと思い浮かばない。

「さみし」と「蠅」が並ぶと思い出すのは映画『The Fly』だ。恋人に嫉妬し酔って転送ポットにはいりこんだ科学者セス。ポットは無機物の転送にはすでに成功していたけれど、セスは見事?有機物として別のポットへ転送される。でも!転送元には蠅が迷い込んでいて、転送されたセスは蠅の情報をとりこんだ生物になってしまっていた。

さて「首から上が蠅」。わたしのイメージは、むじな(のっぺらぼう)である。山高帽の男の表情は、無数の蠅のつらなりのなかに埋没しているのである。

さみし。
posted by 飯島章友 at 00:34| Comment(0) | 木曜日のことのは蒐集帖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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