2015年08月05日

「川柳カード」第9号 @

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「川柳カード」第9号
発行人は樋口由紀子、編集人は小池正博。


【同人作品】
 錠剤を並べて描くキティ―ちゃん  丸山進
 鳥形霊集う南へ南へ  小池正博
 冬の樹と傷の深さは醗酵する  前田一石
 ひまわりはバックドロップ受けそこね  浪越靖政
 ざぶざぶと洗われ少年いなくなる  松永千秋
 見慣れない主語が砂場に立っていた  湊圭史
 口角をそっと行き交う月の道  畑美樹
 草冠のせて原野に立っている  広瀬ちえみ
 ポイントが貯まるとせりあがる砲車  石田柊馬
 スクリーンショットのここに永住権  兵頭全郎
 かたちよきすもも選んで乗る気球  樋口由紀子
 褒められて伸びるタイプの顎の骨  飯島章友


今号の川柳カードでは、誌の扉にわたしの句「猫の道魔の道(然れば通る) だれ」を入交佐妃さんの写真に添えて載せていただいた。
素敵な写真に拙句を合わせていただき恐縮至極。
入交佐妃さんは、早坂類さんの写真短歌集『へヴンリー・ブルー』(歌葉)でも写真を担当されていた。
歌誌「かばん」も去年から東直子さんの絵と短歌を合わせた裏表紙にしているし、また徳永政二さんと藤田めぐみさんのフォト句集『カーブ』『大阪の泡』『くりかえす』(あざみエージェント)もたいへん好評だと聞く(わたしも全冊もっている)。
短詩型作品と写真・イラスト・マンガとの合作はいま盛んになっている。

そうそうイラストといえば、イラストレーターの安福望さんが拙歌にイラストを描いてくださった。

 食器と食パンとペン

まことに恐縮至極。
ご存じのかたも多いと思うが、安福さんの作品集『食器と食パンとペン わたしの好きな短歌』(キノブックス)がついこのあいだ発売された。

では、そろそろ同人作品を見ていこう。
石田柊馬の句からは現代社会独特の不気味さ、あるいは軽薄さがテクストの奥からただよってくる。
また丸山進、湊圭史、兵頭全郎の句からも現代社会の不条理さや体臭のなさがただよってくる。
丸山、湊、兵頭のばあいは必ずしも時代や社会を詠んだものとはいえないかも知れないが(まきこんでしまってすみません・・・・・・)、読後感として現代社会がうっすら浮かび上がってくる。
所謂〈時事川柳〉の、ストレートな物言いによる時代の照射とは書き方が異なる。
何というか、テクストを炙って気化させたうえで意味を吸引させるような(何の話だ)、言いかえれば詩性川柳の体裁を保ったまんま現代社会を臭わせている感じだ。
わたしは既存の時事川柳にくわえ、こういう詩性川柳的な社会吟(というと大袈裟か)がもっと模索されるべきだと思っている。

というのも、あまり意識されていないかも知れないが、既存の川柳界の時事川柳はいま、インターネットの発達でその特有性を失いつつあり、文芸としての存在感が薄くなったと考えるからだ。

現在は、昭和のころサイレント・マジョリティーだった人たちの声もネットをつうじて発信できるようになった。
誰でもお手軽に時代や社会を批評できるようになったのだ。
したがって、昭和のころは庶民が手軽に575で意見表明できた時事川柳という場に、いまや特別感はない。
短文で書かれた社会的意見をネットで目にする機会は急増した。
現在、川柳人が書く時事川柳と似た表現はネットでかなり見つけることができるし、匿名で書かれたネットの時事川柳は恐れを知らないだけにかなりきわどい領域まで切り込んでいる。
現代社会についてあれこれとスマホで呟いている不特定多数のあんちゃん達。
彼らが真似できない表現を模索してこそ、時事文芸・社会文芸としての川柳の特有性は確保される。
その意味で石田柊馬らの句は、川柳で時代や社会を詠むにあたっての一つの指標になる作品といえそうだ。
もちろん従来的な時事川柳の方も、どう時代に対応しネットと差別化をはかっていけるか、その可能性を模索することは喫緊の課題かと思う。

さて浪越の句は、プロレスファンと非プロレスファンでは深刻さが変わってくる作品だと思う。
これはあくまでも想像だが、プロレスを知らない人からすれば、この句はどこかマンガチックな滑稽味をおぼえるのではないだろうか。
だが、プロレスファンのばあいは違う。
2009年6月13日、バックドロップを受けてリング上で死んだ三沢光晴選手のことがどうしようもなく脳裏に浮かぶ。
プロレスファンならあの光景を忘れることはできない。
経験や知識の有無によって表現物への感度は各人違ってくる。
浪越のこの句も存外そういう類の句かと思って掲出してみた。

(つづく)

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posted by 飯島章友 at 21:30| Comment(0) | 柳誌レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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