2015年10月11日

何が。:200字川柳小説  川合大祐

隠棲した家には水槽が付いていた。煉瓦の部屋の中央に置かれて、空色を湛えたそれを見つめながら、自分は詩人として何を泳がせたらいいのかと思っていた。甘ったるい塩風に錆ついたト音記号か。誰ひとり憎まなかった者に愛された秋茄子か。千万人に温められて腐りゆく罪か。罪と言えば人類はその罪により再びの大洪水に見舞われた。街も家も、水槽も水に沈んだ。水底に沈んで、水槽には今も空色が閉じ込められながら、泳いでいる。

  泳いでる詩人の家の水槽に  広瀬ちえみ(『川柳杜人』第247号より)

posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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