病院にいつも持ち歩いている石鹸を忘れてきてしまった。ない、と思えば電車の吊革がおそろしく、やや混み始めた車内で、サーファーのようにバランスを取って立っている。この世には汚いものが多すぎる。何が汚いと言って、つまりは人間が汚いのだろう。人の群は雑菌を媒介するメディアにしか見えない。ならば、その源はどうだ。人の元、いわゆる母は、最も不潔なものではないか。我慢できず下り線に乗り換えた。母のいる、病室へ。
石鹸を母の陣地に盗りにいく 榊陽子(「川柳カード・11号」より)
2016年04月17日
この記事へのコメント
コメントを書く