2017年03月10日

相棒から考える古畑任三郎 安福望×柳本々々−ファーストシーズン第8話「殺人特急」(犯罪者:中川淳一【外科医】=鹿賀丈史)

柳本 きのうの続きなんですけど、『相棒』って、相棒の名前の構造はきまってんですよね。「か」ではじまり「る」でおわる。亀山薫とか神戸尊とか。だからなんか、神話的ですよね。魂だけひきつがれていくみたいなものだから。王権神授説みたいに。

安福 ああ(ほんとだなあ。おうけんしんじゅせつ……王様の真珠かな……へたなことは言わないでおくかな)。

柳本 王様の身体みたいなかんじですよね。身体がうしなわれても魂だけがどんどんひきつがれていくから。
だから『相棒』って伝達の物語のようなきがするんですよ。相棒が相棒性を伝達していく物語。ある意味、魂(ソウル)の物語というか。
それってでも、日本ではなじみぶかいとおもう。元号なんかもちょっとそうですよね。

安福 ああ(あ、そうかあ。こんな例はどうだろう。すこしあげてみるとするかな)。政治家とかもそうですね。なんかその土地代々のってかんじして。

柳本 ああそうですね。歌舞伎とかも。名前をついでいくかんじ。

安福 ああ(こんな解説はどうだろう。すこし話してみるとするかな)。政治家も秘書が優秀でも秘書は名前をもってないからなれませんよね。これは古畑でこれから小堺一機の回ででてくるけれど。やっぱり二代目じゃないととかってなる。

柳本 それは縦の移動ですよね。親から子へっていう。
三谷作品て横の移動が顕著ですよね。映画もかならず前作の登場人物がでてくるし。
今回の中川先生の回も、中川先生は『振り返れば奴がいる』の外科部長でしたからね。あの手がふるえてたやさしくてずるい先生。最初これみたとき、え、つかまえちゃっていいのかとおもったけれど。そういう横のクロスをさせていく。この後に出てくる桃井かおりは『ラジオの時間』にでてくるし。
それってある意味、引き継ぎ不可能性みたいのがあるとおもう。『相棒』とは逆で。
それのわかりやすい例が三谷さんは脚本をぜったいに書籍化しないけど(『オケピ!』は賞をとってしまったので三谷幸喜が断念して書籍化されたが増刷しないため古書価があがっている)、それはほかのひとが演じないようにするためですよね、アマチュア演劇とかで。三谷さんは高校生からやりたいっていわれても断ってるそうだから。
だから三谷幸喜にとって引き継ぎって概念はないんじゃないかと思うんですよ。すべて魂のあてがきというか。もちろん、『オケピ!』で真田広之から白井晃にかわったりもするけど、たぶんかきなおしたとおもうんですよね。そこらへんが『相棒』となにか感覚がちょっとちがうかんじがするんです。
だから今回の中川先生の回はクロスの問題ですね。
で、たぶん、三谷ワールドっていうのは全部がつながってるんだろうなっていう感じがありますね。あの『真田丸』でも松本幸四郎が『王様のレストラン』の伝説のソムリエみたいなかんじで出てきたように。巨大な三谷ヴィレッジみたいなものが。レイモンド・カーヴァーがホープレスヴィルを描いたなら、三谷さんは、ホープフルヴィルを描いたかんじかなあ。
それってもうなにかっていうとやっぱりそれはそれで神話大系みたいになるとおもうんですよ。でも、横の神話ですよね。だからひとつの巨大なヴィレッジ(村)のような。手塚治虫の漫画のスターシステムみたいに役者さんがたびたびおなじひとが起用されていくのもそういう神話的なくうかんをつくりだすとおもうんですよね。横にひろがるネットワークの。
三谷劇の重ねられた身体性みたいのをつくっていく。あの小日向文世さんなんかまさにそうですよね。さいしょは冷酷キャラだったんですけど、古畑ではね、田中美佐子の回で几帳面すぎる夫として出てくるんだけど、二回目の登場は松嶋菜々子の最終回に気のいいおちゃらけキャラになって出てきて。探偵のブルガリ三四郎として。だから三谷さんは小日向文世さんを観察しながら気づいていっていますよね。そのあとその冷酷さとおちゃらけさの両面を弁証法的に複合したのが『真田丸』での豊臣秀吉でしたよね。
西村雅彦もそうだとおもいますね。そういう両面のキャラクターをよくひきだしてる。

安福 ああ(なるほどなあ。ここはよく聞いてるふりをするとしてうなずいておこう)。

柳本 そういう三谷さんがかかわりながらひきだしていく身体性ってありますよね。三谷さんが学習する過程を、オーディエンスもいっしょに学んでいく。たぶんそういうかかわりあいのなかでつくっていくからすべてのキャラクターが三谷神話群のなかに回収されていくんじゃないかとおもうんですよ。
だから〈あてがき〉ってなんなのかってことがいつも三谷さんの作品では問われてる気がする。
でもたぶん感想なんかもそうですよね。なにかについて感想を述べることとか、絵を描くこととかも。

安福 ああ(きゅうに話がこっちにきたなあ。まいったなあ。こっち見てんなあ)。


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安福望:古畑任三郎「殺人特急」の絵

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柳本々々:古畑任三郎「殺人特急」の絵
posted by 柳本々々 at 20:47| 川柳サロン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする