2017年04月25日

最終回から考える古畑任三郎 安福望×柳本々々−ファーストシーズン最終話「最後のあいさつ」(犯罪者:小暮音次郎【警視】=菅原文太)

柳本 古畑のファーストシーズンの最後の話は、三谷作品では必ず少数の理解者があらわれるってことだとおもうんですよ。だから生きることに希望がうまれるというか。救いも。それは殺人をおかしてさえそうなんですよ。最後にあいさつしてくれるひとがあらわれる。

安福 ほんとですね。

柳本 理解者ってあらわれるんですよ。いや、「理解者ってあらわれるんですよ」が三谷作品だとおもう。
たとえばドラマ『総理と呼ばないで』ってあれはさいごに総理と呼んでくれるひとがあらわれるはなしでしょ。ずっと勘違いのような錯綜したかんじがつづいていくんだけど。

安福 いいぞぉ古畑っていってたね、菅原文太。

柳本 さいごやっと、ほんとうの、じぶんの名前を、呼んでくれるひとがあらわれる。それが三谷作品じゃないのかな。

安福 なるほどなあ。

柳本 『真田丸』も真田幸村って名前をさいごてにいれるんだよね。
物語る行為ってね、名前を呼んでくれるひとをさがすことだともおもうんですよ。ほんとうの名前を。

安福 名前ってよばれないと意味ない気がしますね。

柳本 あ、そうなんだよ。「やぎもともともと」ってじぶん自身もあんまりうまく発音できたことがなくて、自己紹介するときも、「やぎもとです」とさらっと言ったりするんだけど、こないだイベントで司会をされていた神野紗希さんが「四限はやぎもともともとさんです」って言われたときに、「やぎもと/もともと」ってすごくきれいな音の出し方をされていてはじめてじぶんの名前に出会った思いだったんですよ。あ、そうかあ、そういう音の出し方があったのかあとおもって。こうのさんはなにげなくさらっと言われたとおもうんですけどね。それでうちにかえってじぶんでもその音の出し方できないかなととおもってなんどかやってみたんだけど、できなかった。

安福 呼ばれてはじめてじぶんの名前に出会ったんですね。

柳本 あいさつのなかで他者をとおしてじぶんを発見することってあるんですよ。
そういえば今回の話のタイトルは「最後のあいさつ」なんだけどこれって、あいさつ以上の関係になれたってことじゃないかな。だから最後のあいさつ。あいさつ的関係のおわり。関係のおわりじゃなくて、関係のはじまり。

安福 ほんとですね。

柳本 あのそういえばずっとつづいてたオープニングもいつもシーズン最終回では「古畑任三郎でした」ってなのっておわるんだよね。じぶんで、じぶんの名前を、呼んであげる。物語のおわりに。

安福 あ、そうなのかあ。

柳本 古畑任三郎が古畑任三郎っていうなまえを手に入れられたってことなんだとおもう。素晴らしい個性豊かな犯人たちとの出会いを通して。

安福 なるほどな。

柳本 そのためにずっと古畑は事件を回想して語ってたんじゃないかとおもうわけ。あのオープニングをみてると。だから犯人にとって古畑はカウンセラーのやくわりをつとめてるけど、古畑にとっても犯人はカウンセラーのようなものだったとおもう。

安福 そうかあ、12人の犯人とであって、名前を手に入れられたんですね。

柳本 だからこれある意味で『12人のやさしい日本人』の物語だね。

安福 あっほんとだ!

柳本 そういえばクリスティの『オリエント急行殺人事件』の犯人も12だね。

安福 あ、そうかあ。なんかあんのかな12って。

柳本 裁きの数だよね。12使徒とか。

安福 あ、そうなんだ。

柳本 13だとだめなんだよね。よくない数字なんだよね。裁けないから、ひとりおおくて。

安福 そうなのかあ。

柳本 フェアじゃないし。ホラー映画の『13日の金曜日』は、裁く話でもあるけど、あれは倫理にもとるわかものたちをころしていくはなしだよね。ホラー映画って基本的にはキリスト教倫理にそむいたひとをころしていくはなしらしいんだよね。だからヌードシーンがおおいみたいなんだよ。セックスしたらだめってことで。生殖以外のセックスってことかな。それをしたらだめなのね。ジェイソンが殺しにくる。

安福 それで、今まで長々と話してきた古畑の話のさいご、その話でいいんですか。

柳本 うん。しかたが、ない。


download_20170425_223717.jpeg
安福の「最後のあいさつ」の絵

download_20170425_222604.jpeg
柳本の「最後のあいさつ」の絵
posted by 柳本々々 at 22:28| 川柳サロン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする