2017年07月11日

「っぱねえっす、ぱねえっす」と来る寒太郎  魚澄秋来


「っぱねえっす、ぱねえっす」と来る寒太郎  魚澄秋来

名古屋のリアル句会「ねじまき句会」がネット上で句会を行った「ねじまき番外編」より。

鉤括弧の「っぱねえっす、ぱねえっす」は、「半端ない」という俗語がさらにくだけた言い回し。「まったく」という言葉が、マンガや若者向けドラマの台詞では「ったく」と略して表されることがあるけど、あれと同じような感じだと思う。
ちなみに「っす」は「です」の変化で、「口語の丁寧語の終助詞。聞き手に対する敬意を示す。知的なイメージは無い」とリンク先に書いてあったっす。

また「寒太郎」とは、NHKの「みんなの歌」でおなじみの楽曲「北風小僧の寒太郎」のことだろう。わたしも幼児の時分によく歌っていたおぼえがある。

さて、掲出句で面白かったのは、「っぱねえっす、ぱねえっす」という鉤括弧内の〈話言葉〉が〈オノマトペ〉としても機能しているように思えたからだ。というか初見でわたしは、鉤括弧がついているにもかかわらず、まず寒太郎=北風のオノマトペとして受け取ったくらいで。
それは、北風の一般的なオノマトペ「ぴゅうぴゅう」のP音と「ぱねえっす」のP音が共通したからかも知れない。あるいは「っぱ」「えっす」という促音が、寒太郎=北風の力強くも無邪気な動きを想起させたからかも知れない。いずれにせよわたしの頭の中では、寒太郎=北風が「っぱねえす、ぱねえっす」と言いながら空でくるくると回転し、街中に寒気をふりまく映像が再生されている。

或る音が複数の表現機能を兼ね備える例として次の短歌を思い出した。

音速のセナや おおおお 咲き盛るセナや おおおお 万乗のセナ…  池田はるみ『妣が国大阪』

音速の貴公子≠アとアイルトン・セナの人気はすさまじかった。と同時に、賛否はあるようだけど、古舘伊知郎のF1実況も強烈な印象をのこした。
掲出歌の「おおおお」という音は、〈レーシングカーの通過音〉〈観客たちのどよめき〉、そして古舘伊知郎の十八番である〈おおおっと!〉など、さまざまな表現へと連絡していく。また「天子。また,天子の位」という意味の「万乗」が、「中国の周代に,天子は戦時に兵車一万両を出した」のが元だと分かると、「おおおお」は〈兵車一万両の地響き〉にすら連絡していく。

何はともあれ今回の魚澄作品は、去年出合った川柳の中でも特に印象深く、最近もしょっちゅう口遊んでいるのであります。



posted by 飯島章友 at 07:00| Comment(0) | 飯島章友・一句鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。