2019年01月27日

定金冬二句集『一老人』

定金冬二句集『一老人』(2003年・詩遊社)
編者 倉本朝世

余所のピアノでボクは静かに風邪をひく
ぼくが倒れたのは引力のせいなのか
紙ヒコーキから落ちて 少年兵勃起
一老人 交尾の姿勢ならできる
ぼくのためにぼくがいて哀しみはふえる
軍事評論家のはるかなる風景画
頭が悪いので天皇にあいに行く
俺は 12月の風船なのか 神よ
かすかな期待で柩の蓋をする
神に手を合わすぼくにも手を合わす
一老人 風の割れ目で息をして
お祝いとして少年の瞳をもらう
てのひらの汚れをてのひらでぬぐう



倉本朝世編。「一枚の会」「新京都」「アトリエの会」「韻」「CIRCUS」「連衆」と「津山川柳大会」の発表誌を参考に、1984年〜1995年までの240句が選ばれている。これ以前、冬二には『無双』(1984年)という句集があり、そこには〈穴は掘れた死体を一つ創らねば〉など、1945年〜1983年までの1200句が収められている。ちなみに『無双』は、なかはられいこさんのブログ「そらとぶうさぎ」で閲覧することができる。

定金冬二(1914年〜1999年)の川柳には、作者の境涯から発せられる臭いをつよく感じる。だが、作者の境涯を素直に叙述しているということではない。冬二の川柳は作者の境涯から出発しつつも、川柳というステージで自身を演じている雰囲気がどこかある。それは、冬二と同じ年齢の歌人・山崎方代にも通じる雰囲気だ。こうなるともう、境涯派か言葉派かという分け方は意味がなくなってしまうかも知れない。

あざみエージェント『一老人』

posted by 飯島章友 at 11:56| Comment(0) | 柳誌レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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