2021年03月01日

「川柳ねじまき」第7号@

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「川柳ねじまき」第7号
発行人:なかはられいこ
編集人:川柳ねじまき制作委員会
定価:550円(税込)

「川柳ねじまき」♯7が発行されました。今回は表紙が写真ではなくイラストです。フクロウと目玉焼きの取合せ。いろいろと想像がふくらみます。

『はじめまして現代川柳』(書肆侃侃房)を読んで川柳に関心をもたれた方なら、「川柳ねじまき」も気に入るかも知れません。注文は、ねじまき句会のブログの記事『ねじまき#7』で受け付けているそうです。

それでは以下、全体の一部ではありますが作品を見ていきます。

 どうも、どうも、どうも、と春の雪が降る  なかはられいこ

辞書を引くと、単に「どうも」といってもいろいろなニュアンスがあるようです。だから掲句も、「やあどうも!」という挨拶の意味合いだけではないかも知れません。なんの因果か、どうも桜とコラボをすることになっちまいまして、という飄々感。こんな時季に降っちまってごめんよ、という謝意。あれ、もしかしてオヨビでない? というばつの悪さ。そういうのをすべて併せ持った「どうも」だと受け取りました。ちなみに、どうもで思い出すのは〈どうもどうも通りすがりの黄色です〉という川柳(小野善江、「現代川柳ゆうゆう夢工房」2010年4月の句会)。初心の頃とても惹かれたのであります。

 撫でてやるざらざらしてる「けんざかい」  同

テレビ東京系列の番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」を観ているひとはわかると思うのですが、路線バスだけで県境を越えるのはとても難しい。その番組では県境越えがゲームのポイントになっているわけです。わたしたちの身近なところでも、たとえば市の境界線でまったく違う風景になることってありますよね。そういうことを考えながら県境の「ざらざら」と「撫で」るをイメージしました。また「ざら」と「ざか」の音的な近さも「撫でてや」った効用かな、と思ったりします。ところで川柳や短歌の世界ではこのような作品を読むとき、立体地図などに触っている実景を想定する方がいます。もちろんそれでいいのですが、言葉が実景化する手前を味わうたのしみもある、とわたしは考えています。

 朝がきて空が青くて、なんか、ごめん  同

この句を見てすぐに思い出したのは〈いっせいに桜が咲いている ひどい〉でした(松木秀、「おかじょうき」2015年5月号)。「空が青くてなんかごめん」でもなく、「空が青くて、なんかごめん」でもなく、「空が青くて、なんか、ごめん」であること。これは打つべき二つのテンであって、たとえばお題が〈句読点〉だから何となく使ってみたという感じはしません。

 雨と雨のあいだに挟む小倉あん  八上桐子

漉しあんでも粒あんでもなく「小倉あん」なのがいいです。雨→粒あんの流れだと一読明快でつまらない。また雨と雨のあいだ→漉しあんの流れでもそのまますぎる。雨と雨のあいだ→小倉あんという流れだからこそ、関係性にねじれが生じてオッ! となるのだと思います。小倉あんは漉しあんに蜜漬の小豆をまぜたもの。漉しあんとも粒あんとも違うわけです。掲句の雨と雨のあいだには、まるで小倉あんのように、語り手の心情や環境にモードチェンジが起こるのかも知れませんね。

 団塊はアランドロンと波裏富士  丸山進

「団塊」と「アランドロン」と「波裏富士」。浪裏富士というのは富嶽三十六景「神奈川沖波裏」の富士山でしょうか。さて、まずアランドロン。団塊世代の若い頃、美男の象徴といえばアランドロンでした。なので「君は日本のアランドロンだ」なんて言えば最高の誉め言葉だったと聞きます。ちなみにDA PUMPのISSAが〈平成の火野正平〉なんて呼ばれていた時期があるのですが、それは昭和時代に火野正平がモテ男の象徴だったからです(いまは自転車に乗っているオジサンのイメージですが)。まあ、そんなわけでアランドロンと団塊の関係はよくわかるのです。でも浪裏富士のほうは唐突感があります。なぜ葛飾北斎。北斎の富嶽三十六景が版行されたのは北斎が七十代前半のとき。現在の団塊世代と似たような年齢ですね。何となくそのあたりをほのめかしている気はします。ただ、アランドロンから波裏富士への流れに読み手が意表をつかれれば、それで成功の句だと思います。ちなみに固有名詞を使った短歌に次のような作品があります。〈日本はアニメ、ゲームとパソコンと、あとの少しが平山郁夫〉(黒瀬珂瀾『空庭』、本阿弥書店、2009年)。
(つづく)
posted by 飯島章友 at 07:00| Comment(0) | 柳誌レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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