2021年08月03日

「Picnic」No.3 @

Picnic No.3
編集:野間幸恵・石田展子
定価¥1000

かたち良きくちびる残すギリシャかな  大下真理子
スプーンは遠い国から来たようだ  樋口由紀子
ガムテープ顔の上には顔があり  〃
週三で通う段差ダンサーズ  榊陽子
朝死が眩しい行ってみようか  〃
蓮根を食べると穴の味がする  月波与生
錠剤になった幸せそうな人  〃
覚めながら裂けながら書く手紙かな  岡村知昭
牛乳や行方不明の語られず  〃
数学の苦手な人も噛むパセリ  中村美津江
貼り紙は「しばらくドアを休みます」  広瀬ちえみ
さみしさになる永遠のハンモック  野間幸恵
山羊座など後ろが開くワンピース  〃
底冷えのビルなり絶対音感  〃
裏漉しの続きをキルケゴールする  〃


7月に「Picnic」の3号が出ました。今回の参加者は15名。どのような集まりなのか私もよく分かっていないのですが、五七五という共通項をもとに、俳人や柳人の区別なく集まった同人誌のようです。

また、これもよく分からずに言うのですが、参加者の皆さんは俳句や川柳の主流派(と何となく見なされているもの)と書き方が違っているように思えます。だからこそ、こうしてジャンルの区別なく集まれるのかも知れませんね。

ここでいくつか句を見てみましょう。樋口さんの「ガムテープ顔の上には顔があり」、何だか奇妙な情景ですね。でも、阿部寛や松重豊といったノッポの俳優さんが出ているドラマでは、縦のツーショットを見かけることがあります。つまり「顔の上には顔があ」るわけです。特定の条件がなくては生じない「顔の上には顔」ではありますが、ガムテープという庶民的な小道具があることによって、ごく日常的な風景に思えてくるから言葉って不思議ですよね。

榊さんの「週三で通う段差ダンサーズ」ですが、じつは以前テレビ朝日の「タモリ倶楽部」の中で、タモリさんが先んじてこのシャレを使っていました。けっこう昔の放送です。その回ではたしか、東京は世田谷の明神池跡をタモリ一行が訪ねていました。検索してその場所を見れば分かるのですが、そこは池の跡地だけに少々低くなっていて、階段で降りるようになっています。その高低差に萌えを感じたタモさんが、俺は段差好きのダンサーっすから、みたいに言っていたのですよ。だから正直言うと、掲句のその部分に関してはネタバレして読んだのです。でも、段差ダンサーズに「週三」で通うのがおかしくて思わず笑ってしまいました。段差ダンサーズって音感も映画のタイトルになりそうでおもしろい。ちなみにわたしも国分寺崖線・湧水好きのダンサーである。

月波さんの「蓮根を食べると穴の味がする」ですが、ザ・川柳という感じがして、とても嬉しくなります。読みの可動域において格差がある川柳界ではありますが、この句はどんな層の柳人でも味わえるのではないでしょうか。尤も、どんな層でも味わえると言ったばあい、川柳界では一読明快な句を指します。それは実際のところ「言われなくても知ってます」という平板句であることが多いのだけど、月波さんのこの句は一読明快でありつつも平板ではないですよね。このセンスが今の大吟社の川柳に少なくなっていると思うのです。
(つづく)
posted by 飯島章友 at 07:00| Comment(0) | 柳誌レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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