2020年11月14日

「Picnic」No.1

「Picnic」1
発行日 2020年11月1日
編集 野間幸恵・石田展子
発行所 TARO冠者
定価 ¥1000

5・7・5作品集「Picnic」No.1をいただきました。参加者は中村美津江、木村オサム、月波与生、樋口由紀子、松井康子、梶真久、大下真理子、あみ こうへい、榊陽子、広瀬ちえみ、石田展子、野間幸恵の各氏です。同集は俳人と柳人が一緒に参加しています。

 マジシャンの鳩を並べる仮眠室  月波与生

「マジシャン」「鳩を並べる」「仮眠室」の相乗効果によってリアル「感」が出ています。「リアル」感よりもリアル「感」が大事。

 うどん屋で振り向いたのはオペラ歌手  樋口由紀子

江戸川柳っぽい意外性とリアル「感」があり、とても好きな句です。

 九州と四国の間にエビフライ  〃

確かにエビフライがいいと「感」じられます。ミニトマトでは駄目。

 時間より零れる魚と日曜日  梶真久

流れの水嵩が増しているのでしょうか。「魚」と「日曜日」がこぼれてしまう。

 しあわせにすると言うコロッケのくせに  広瀬ちえみ

コロッケのくせに生意気だぞ。なのに、あれ、へんだな、目からジャガイモがぽろぽろこぼれてくるよ。

 どこまでも遠浅だった市川雷蔵  石田展子

市川雷蔵の存在「感」をうまく捉えています。「どこまでも」が的確。ちなみに、わたしは「陸軍中野学校」シリーズが好きです。

 詐欺師かもしれない月の匂いして  野間幸恵

だから『竹取物語』だって裏読みが必要。

同集はスパイラル綴じで、作品はすべて横書きになっています。短詩の世界での横書きはまだまだ珍しいかも知れませんね。

誰が言ったか忘れましたが、短歌を作ったら縦書きと横書きの両方で確認するとよい、と。確かに縦と横では歌の印象が違うんです。縦書きを横書きに直して読んでみると、漢字の多用が気になったり、文末の体言止めが気になってきたり。逆に、横書きを縦書きに直して読んでみると、動詞で終えた文末が無骨に思えてきて、助動詞を添えようという気持ちになったり。余談でした。
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2020年10月09日

川柳雑誌「風」118号/第21回風鐸賞正賞 本間かもせり

川柳雑誌「風」第118号
編集・発行 佐藤美文

今号は第21回風鐸賞の発表号でした。十七字と十四字の10句、どちらで書いても応募できる「風」誌の年間賞です。今回の正賞は本間かもせり、準賞は伊藤三十六と森吉留里惠、選考委員は成田孤舟、津田暹、新家完司、雫石隆子、木本朱夏の各氏。

受賞作を少し引用させていただきます。

 どのページにも待つ人がいる  本間かもせり
 逃げて逃げてと叫ぶ天気図
 となりの窓も窓を見ている
 二、三歩先を歩き出す季語

 
 片仮名の海に漢字を投げてやる  伊藤三十六
 人を食うことにも飽きた大欠伸

 メビウスの輪の見せぬハラワタ  森吉留里惠
 寂しくなると飛ばすミサイル

かもせりさんの句は、ただごと句、教訓句、老いの嘆き句といった、各川柳吟社で量産されている書き方におもねらない着眼点の良さと想像力があって、納得の正賞です。かもせりさんは、短句(「風」誌でいう十四字詩)を知ってもらいたいと積極的にTwitterなどで活動してこられた方です。いわば「公」の意識をお持ちの方です。かもせりさんには遠く及びませんが、わたしも世間に短句を知ってほしいと願っている一人なので、今回の報はまるでじぶんのことのように嬉しいのであります。

なお伊藤三十六さんはリアルで何回もお会いしていますが、とてもおもしろいおじ様です。森吉留里惠さんは『十四字詩句集 時の置き文』を発行されていて、こちらは電子書籍で読むことができます。

つぎに会員作品「風鐸抄」の十四字詩も引用させていただきます。

 耳に住み着く虻が百匹  坂本嘉三
 感染減らず揺れる吊り革
 梅雨が居座る家系図の中
 春の小川を慕う血管


先述したただごと句、教訓句、老いの嘆き句の流れに巻かれない書き方で注目しました。背景に老いの嘆きがあったとしても、それを川柳として「表現」なさっている。こういう方を見逃さないことがじぶんの役目だと思ったりしているのです。
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2020年09月22日

川柳『杜人』267号

今号のみどころは「特集・広瀬ちえみ句集『雨曜日』」です。執筆者は荻原裕幸さん、樋口由紀子さん、月波与生さん、なかはられいこさん。とても残り一冊で終刊する柳誌とは思えないブッキング力ですね。ふと名プロモーターでもあったジャイアント馬場を思い起こしました。

 もう夏の終わりのツノとして光る  広瀬ちえみ

今号の同人作品より。「夏の終わり」という、よくある臭いフレーズからの唐突な「ツノ」。初読では意表をつかれて面白さが先立ったけど、再読すると「ツノとして光る」の抒情性がしみこんできました。初読と再読とでまったく印象がちがった句です。

 みるみる狂う猛暑日なんか作るから  小野善江

誌上題詠より。お題は「 ☼ 」。人間は概念の生き物だから、知識を得るとそれによって翻弄されてしまうこともあります。日々増えていく「〜の権利」など、生きやすさをもたらす反面、生きにくさにもつながっているかも知れない。それは「猛暑日」という概念・システムの創出にもいえると思うのです。

 まだ何か言いたそうだね傷口は  みさ子

八月句会、宿題「閉」より。傷口は粘液のようにねちっこく小言をいう。治りかけに延々と痒みを出すのなんていい例かも知れない。掲句は「傷口」の悪癖を川柳らしくズバっと抉り出しているのです。


川柳杜人社
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2020年08月25日

夏の夜のスリラー川柳

本日8月25日は「川柳発祥の日」。というわけで「夏の夜のスリラー川柳」を選んでみました。




死にきれぬものがうごめくゴミ袋  普川素床




あちこちに芒はみだす死後の姉  石部明




長い髪の少女を飾る地平線  畑美樹




かあさんがなんども生き返る沼地  なかはられいこ




肉体は片付けられた紅葉狩り  樋口由紀子




するめ堅しあかんぼうやわらかし  石田柊馬




ある日届いた郵便ではない手紙  小池正博




塩をたっぷり振りかけ楽にしてあげる  広瀬ちえみ




夢想する首は水平に干そう  清水かおり




穴は掘れた死体を一つ創らねば  定金冬二




※出典(順番どおり)
・川柳作家全集『普川素床』
・セレクション柳人3『石部明集』
・『バックストローク』第36号
・『脱衣場のアリス』
・セレクション柳人13『樋口由紀子集』
・セレクション柳人2『石田柊馬集』
・セレクション柳人6『小池正博集』
・セレクション柳人14『広瀬ちえみ集』
・セレクション俳人プラス『超新撰21』
・『無双』
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2020年08月07日

「川柳カモミール」第4号

発行人 笹田かなえ
定価  500円(送料別)

7月20日に「川柳カモミール」4号が発行されました。
今回は「カモミール句会設立五周年記念誌上句会」の発表号です。
上位句については「川柳日記 一の糸」をご覧になってください。

以下は川柳カモミールメンバーの作品より。
なお今回、各作品への評は、柳人の小池正博さんと歌人の佐々木絵理子さんが担当されています。

 とびきりの笑顔でエッシャー渡される  潤子

渡されたのがエッシャーとなれば、「とびきりの笑顔」も字面どおりには受け取れない。
福笑いのような笑顔なのかもしれません。

 点だった頃の点ではなくて 雨  守田啓子

点にも境涯がある。
かつては時間の流れを塞き止めていた点なのに、いまは雨の滴のように時の流れに身をまかせ。

 また百羽カラスが増えて楽しい地球  細川静

カラスも地球の賑わい。
先進国の人間は少子高齢化でも、カラスや、ごきぶりや、ねずみは、ますます増えていくのでしょうね。

 前世はスーパー南瓜だったのよ  滋野さち

漢字の前に「スーパー」をつけるとアラ不思議、渋さが一変します。
スーパー銭湯、スーパー歌舞伎など、実際にあるもののほか、スーパー川柳、スーパー写経、スーパー町内会、スーパー平泉成なんてどうでしょう。

 牛乳と乳牛ほどに遠去かる  笹田かなえ

カレーライスとライスカレーならば違いは殆どありませんが、牛乳と乳牛だと確かにまったく違いますね。
豆乳と乳豆でもまったく違いますが、18禁かも。

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posted by 飯島章友 at 23:30| Comment(0) | 柳誌レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする