2017年03月26日

ダウンワード・スパイラル:200字川柳小説  川合大祐

エメサ王国の祭祀場で死別して以来、魂はかの面影を求め、果てのない輪廻を繰り返し続けた。ある時は木村政彦対エリオの試合場で、ある時は銀河連邦の舞踊会議場で、かの面影を探し続けた。そのうちに気付くのだ。輪廻は円環ではないと。ある点から始まった線が、回転しながら垂直に上昇してゆくのだと。ならば、もう会うことは無いのだなと思った。だが魂は探し続ける。螺旋。そう螺旋だ。重要なのは連続だった。うんこのように。

  蚊取線香上のうんこ  二村鉄子(「川柳ねじまき#3」より)

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2017年03月19日

残酷!光怪獣プリズ魔:200字川柳小説  川合大祐

何もかもが透きとおった世界だ。海もビルも蠅も光を通過させて、ただ、その方向を屈折させている。光の分散はさらに分散し、結局は透きとおるだけになってしまうのだった。波打ち際に、魚が一匹流れ着いた。流線型の、黒々とした魚だった。冷たく、それは世界のすべてと同じだった。だが、この黒さは何なのだろう。体内に何かを秘めることのできる黒さは。腹に切れ目を入れてみた。溢れる内臓は、次から次へと透きとおっていった。

  魚の腹ゆびで裂くとき岸田森  なかはられいこ(「川柳ねじまき#3」より)

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2017年03月12日

南極熊の生態:200字川柳小説  川合大祐

【和名】ナンキョクグマ【学名】ウルスス・メンダシウム【体長】0.05mm〜50M【平均寿命】1週間【特長】外見上はホッキョクグマに酷似しているが、縞柄や豹柄、まれに透明の個体も存在する。主食はココナッツであり、別個体の頭部に殻を打ちつけて割る。ために同族との接触を極度に警戒するが、常に実を咥えている。あらゆる論文・事典・WEBから抜け落ちる習性を持つため、この種を記述した文章はどこにも存在しない。

  白夜来て南極熊が踊り出す  いば ひでき(今月の作品「ギター」より)

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2017年03月05日

48→84(よんじゅうはちからはちじゅうよん):200字川柳小説  川合大祐

→のボタンを押したままにすると、いつしか強大な魔王の前に立っている。そう、あれは1984年のことだった、ような気がする。『必殺』が『必殺まっしぐら!』だったのもその頃だった、ような気がする。その一年後には某球団が優勝して、主水がバースになっていたりした、ような気がする。騒がしい日々、だったような気がする。朝、ふと気付けば、スクロールから戻り道がないのだった。←のボタンを失くしていた子供は↓だった。

  カレーから耳だけ出している子供  竹井紫乙(第76回川柳北田辺・席題「から」)
 
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2017年02月26日

噓だと言ってよ、マミー:200字川柳小説  川合大祐

折り鶴の展開図を見ていて、「山折り」ということがどうしてもわからなかった。ママに訊いた。「どうしてこれが山なの。山って、地面がへこんだところのことじゃないの」。ママは「そうよ」と笑って、その笑顔のまま、歳を取っていった。白髪が増え、皺が刻まれても、ついに鶴が折れることはなかった。臨終の場で、ママは「ごめん、山って地面が盛り上がってるところなの」。なんで、と訊くと「そのほうが、おもしろいと思って」。

  君の噓くらいで山は折れないよ  小池正博(「人体は樹に、樹は人体に」/『川柳サイド Spiral Wave』より)

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