2017年03月12日

南極熊の生態:200字川柳小説  川合大祐

【和名】ナンキョクグマ【学名】ウルスス・メンダシウム【体長】0.05mm〜50M【平均寿命】1週間【特長】外見上はホッキョクグマに酷似しているが、縞柄や豹柄、まれに透明の個体も存在する。主食はココナッツであり、別個体の頭部に殻を打ちつけて割る。ために同族との接触を極度に警戒するが、常に実を咥えている。あらゆる論文・事典・WEBから抜け落ちる習性を持つため、この種を記述した文章はどこにも存在しない。

  白夜来て南極熊が踊り出す  いば ひでき(今月の作品「ギター」より)

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2017年03月05日

48→84(よんじゅうはちからはちじゅうよん):200字川柳小説  川合大祐

→のボタンを押したままにすると、いつしか強大な魔王の前に立っている。そう、あれは1984年のことだった、ような気がする。『必殺』が『必殺まっしぐら!』だったのもその頃だった、ような気がする。その一年後には某球団が優勝して、主水がバースになっていたりした、ような気がする。騒がしい日々、だったような気がする。朝、ふと気付けば、スクロールから戻り道がないのだった。←のボタンを失くしていた子供は↓だった。

  カレーから耳だけ出している子供  竹井紫乙(第76回川柳北田辺・席題「から」)
 
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2017年02月26日

噓だと言ってよ、マミー:200字川柳小説  川合大祐

折り鶴の展開図を見ていて、「山折り」ということがどうしてもわからなかった。ママに訊いた。「どうしてこれが山なの。山って、地面がへこんだところのことじゃないの」。ママは「そうよ」と笑って、その笑顔のまま、歳を取っていった。白髪が増え、皺が刻まれても、ついに鶴が折れることはなかった。臨終の場で、ママは「ごめん、山って地面が盛り上がってるところなの」。なんで、と訊くと「そのほうが、おもしろいと思って」。

  君の噓くらいで山は折れないよ  小池正博(「人体は樹に、樹は人体に」/『川柳サイド Spiral Wave』より)

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2017年02月19日

薔薇の名前:200字川柳小説  川合大祐

「1877年、マーシュとコープとの間に勃発した〈化石戦争〉において」と〈博士〉は語りはじめ、「結果として、〈ブロントサウルス〉の名前を」と続けた時、〈偉人〉が乱入してきて、「〈ブロントサウルス〉はその名前であり続けるべきだ」と銃を振り回すのを〈下駄日和〉が制止して、「名前などどうでもいいだろ」、「いや」と〈水母に似た彗星〉が異議を唱え、「私達のあだ名は考えるべきだ」、ところで、吾輩は〈猫〉である。

  おまえのせぼねにあだ名をつけてやる博士泣きながら  柳本々々(「そういえば愛している」/『川柳サイド Spiral Wave』より)

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2017年02月12日

ダンス・ウィズ・モスラ:200字川柳小説  川合大祐

まこと、モスラさんのまえでで踊る舞子さんちゅうもんはな、えれえずくのいるお役目だもんで、はあるかこっち、つとめる者もおらんくなっちまった。見らし、モスラさんも呆れて卵から孵って来ないに。若えのには、モスラさんが寝てたほうが平和でいいっちゅうもんもおるけど、奴らだって、ほんとは見てえずら。モスラさんがもう一遍、卵から這い出して、羽広げてけえってくるところ。まあ、卵が腐ることあねえ。ここは冬の国だに。

  おいそれと腐りはしないフラダンス  榊陽子(「ユイイツムニ」/『川柳サイド Spiral Wave』より)

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