2017年03月05日

48→84(よんじゅうはちからはちじゅうよん):200字川柳小説  川合大祐

→のボタンを押したままにすると、いつしか強大な魔王の前に立っている。そう、あれは1984年のことだった、ような気がする。『必殺』が『必殺まっしぐら!』だったのもその頃だった、ような気がする。その一年後には某球団が優勝して、主水がバースになっていたりした、ような気がする。騒がしい日々、だったような気がする。朝、ふと気付けば、スクロールから戻り道がないのだった。←のボタンを失くしていた子供は↓だった。

  カレーから耳だけ出している子供  竹井紫乙(第76回川柳北田辺・席題「から」)
 
posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月26日

噓だと言ってよ、マミー:200字川柳小説  川合大祐

折り鶴の展開図を見ていて、「山折り」ということがどうしてもわからなかった。ママに訊いた。「どうしてこれが山なの。山って、地面がへこんだところのことじゃないの」。ママは「そうよ」と笑って、その笑顔のまま、歳を取っていった。白髪が増え、皺が刻まれても、ついに鶴が折れることはなかった。臨終の場で、ママは「ごめん、山って地面が盛り上がってるところなの」。なんで、と訊くと「そのほうが、おもしろいと思って」。

  君の噓くらいで山は折れないよ  小池正博(「人体は樹に、樹は人体に」/『川柳サイド Spiral Wave』より)

posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月19日

薔薇の名前:200字川柳小説  川合大祐

「1877年、マーシュとコープとの間に勃発した〈化石戦争〉において」と〈博士〉は語りはじめ、「結果として、〈ブロントサウルス〉の名前を」と続けた時、〈偉人〉が乱入してきて、「〈ブロントサウルス〉はその名前であり続けるべきだ」と銃を振り回すのを〈下駄日和〉が制止して、「名前などどうでもいいだろ」、「いや」と〈水母に似た彗星〉が異議を唱え、「私達のあだ名は考えるべきだ」、ところで、吾輩は〈猫〉である。

  おまえのせぼねにあだ名をつけてやる博士泣きながら  柳本々々(「そういえば愛している」/『川柳サイド Spiral Wave』より)

posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月12日

ダンス・ウィズ・モスラ:200字川柳小説  川合大祐

まこと、モスラさんのまえでで踊る舞子さんちゅうもんはな、えれえずくのいるお役目だもんで、はあるかこっち、つとめる者もおらんくなっちまった。見らし、モスラさんも呆れて卵から孵って来ないに。若えのには、モスラさんが寝てたほうが平和でいいっちゅうもんもおるけど、奴らだって、ほんとは見てえずら。モスラさんがもう一遍、卵から這い出して、羽広げてけえってくるところ。まあ、卵が腐ることあねえ。ここは冬の国だに。

  おいそれと腐りはしないフラダンス  榊陽子(「ユイイツムニ」/『川柳サイド Spiral Wave』より)

posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月05日

(マックイーンの絶対の)危機:200字川柳小説  川合大祐

状況は急迫している。「本日は閉店しました」の貼り紙を留めておく五寸釘が全部引き抜かれて、閉店することができない。それなのに客はひとりもやって来ない。明日は局地的に核戦争が始まるかもしれないのに、運が悪い。隣が金物屋なので、五寸釘を買って来ようかと思うが、その隙に客が来ないとも限らない。何もかも限らない世界の、限られた終末がやって来ようとしている。状況は急迫している。だから、叫べ、「たすけて〜」と。

  「たすけて〜」と干ぴょうは叫べない  岩田多佳子(ゲスト作品「くぐもる」より)

posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする