2015年11月15日

200字の証明:200字川柳小説  川合大祐

三五十五は人名である。名に反比例して(比例して)、ついに彼は「数」という概念を理解することがなかった。「零」の次が「一」であるという驚異的な飛躍が、どうしても受容不可能だったのだった。故に、数学試験は常に百点だった(愚か者のみが偉大な天才になりうる)。彼には二人の友人がいた。女と男という対角線上にいる二人は結婚した。式の一日前、三五十五は身を投げた。握りしめられた紙片には「3」とのみ書かれている。

  3a+3c=4(a+c)=初恋  月波与生(『月刊おかじょうき』2015年10月号より)

*小林まこと『柔道部物語』より名前借用。


posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする