2016年06月05日

海市叙景:200字川柳小説  川合大祐

私は、海市蒐集家である。いつも弁当売りのような容器を首に掛け、この市をうろついている。容器にはほとんど何も入れない。入れるに値するものがないからだ。だから私は記憶する。港に作られた子供用のプール、工業地帯のむせる臭い、等々。ある朝、そのひとつが記憶から消えた。ひとつ消えるたびに、連鎖して他の思い出が消えていった。容器から、三粒の砂が順に消えてゆく所を見た。そもそも私はこの世界にいやしないのだった。

  容から海市へ そもそも非在  清水かおり(「グレースケール」より)

posted by 川合大祐 at 00:00| Comment(0) | 川柳小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする