2016年06月12日

追求者:200字川柳小説  川合大祐

大体において魔都だと思っていた。阪神のユニフォームを着た人で溢れかえり、エスカレーターは右側に並んで、いけない薬を普通に売っている町だと。梅田駅についてすぐ、キタに行こうと通行人に道を訊いた。「キタかあ。キタなあ」とおっちゃんは考えて「南の正反対なんやないか」と答えた。よく考えると、あれが「何でやねん」と言う最初で最後のチャンスだったのかも知れない。三日間いて、一度も「何でやねん」を聞かなかった。

  何でやねん何でやねんと日が暮れる  高野久美子(「川柳びわこ」第636号より)

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