2016年08月28日

週刊俳句・第488号

週刊俳句・第488号の【週俳7月の俳句川柳その他を読む】に、飯島章友の「何度も反す八月の砂時計 1」を掲載していただきました。よろしくお願いいたします。

何度も反す八月の砂時計 1
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2016/08/7-1.html

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新解・真田太平記:200字川柳小説  川合大祐

たぶん祖父が建てたのだと思うが、実家のトイレは広かった。地平線が見えるほどではないが、実感としてそれくらいあった。早急の用で、広大な部屋の真ん中にある便器に向かう時、あやまちを冒してしまうことも屢々だった。そこで、部屋のあちこちに青いバケツを置いて、それらに用を足すことになった。「青バケ」と呼ばれたそれは、いつの間にか厠を埋め尽くし、異臭を放ち、誰が捨てるかで家族会議が開かれた。戦争がはじまった。

  厠まだ満願成就ほど遠く  くんじろう(「川柳カード・12号」より)

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2016年08月23日

有馬湯女/八上桐子(川柳)×升田学(針金アート)

葉ね文庫・開店1周年プロジェクト・「葉ねのかべ」第四弾、
有馬湯女/八上桐子(川柳)×升田学(針金アート)(葉ね文庫)のトークイベントへ行ってきました。

「葉ねのかべ」とは葉ね文庫の壁面を活用して詩歌人の作品発表の場としていただこう、というプロジェクトです。(葉ね文庫ブログより)

ちなみに
第一弾は高塚謙太郎さんの詩と、はらだ有彩さんの絵によるコラボレーション作品
第二弾は憑依系俳人石原ユキオさんの俳句の展示
第三弾は虫武一俊さんの短歌と三宅愛子さんの写真のコラボレーション作品

今回は、八上桐子さんが、「もし、句集をだすときにこんな装丁ならなんてすてきだろう」と想いを寄せておられた、針金画家・升田学さんにメールを送り、コラボが実現。

升田学さんの「有馬湯女」は、針金1本で構成される絵画的な作品「ヒトスジ」のひとつです。
葉ね文庫のかべに展示された「有馬湯女」のうつくしさに、しばし見惚れました。

下の写真は、升田学さんが撮影されたもの。
升田学さんのサイト、アートーンのリンクを貼る了解をいただいた際、送ってくださいました。

有馬湯女.png

左側にニシメタ?色の布が映っています。
これは八上さんが腰紐を有馬温泉の金の湯にそめられたもの。
その腰紐にさらさらさらっと、これもうつくしい字でエンドレス川柳(下句が、次の句の上句になり。20句目の下句は、1句目の上句になっています)がしたためられています。
八上さんは、「有馬湯女」とのコラボにあたり、有馬温泉に泊まって創作にとりかかられたとのこと。腰紐の色はもっと濃かったのですが、温泉成分で表面がざらざらしていたので洗い、すこし淡くなったそうです。

さて、当日は八上桐子さんの朗読もありました。
有馬湯女20句、しっとり湯気がたちこめているよう。

ね、雨もお湯の匂いがするでしょうあふれる水も息継ぎを惜しんで呼べば鳥の頚ちいさい橋を渡るとき縦に伸縮する時間いつもとおくで鳴く一羽石とひとつの影になる紐をいっぽん結ばれて吊るされて谷深くふかく眼の水ののぞく水にわかに人のざわめきがタンサン坂のはるか上カラスの羽の落ちてゆく湯水も傷の口ひらきからっぽのビン並ばせるうつくしくかつ退屈になぞられている耳の縁おやすみすすすすべり込む列車乾いた舌だった橋も坂も湯も ね、雨も



ね、雨もお湯の匂いがするでしょう/するでしょうあふれる水も息継ぎを/息継ぎを惜しんで呼べば鳥の頚/鳥の頚ちいさい橋を渡るとき・・・・・・とつらなってゆきます。

いいですね。雨、お湯の匂い、鳥の頸、橋、時間、石とひとつの影になる、紐、眼の水の、カラスの羽(有馬湯女の頭に載っているのはカラスだそう。いままでみたなかで一等うつくしいカラスでした)、からっぽのビン、うつくしく退屈に、おやすみすすすすべりこむ。
ぜひ声に出して読んでいただきたいです。

おもしろいお話・ゾクゾク(続々)のトークイベントでした。

↓升田学さんのサイトより、葉ねのかべのイベント紹介
http://www.a-t-n.jp/topics/2016/08/_811thu1010mon.html
↓来月9月8日から10月31日迄、有馬温泉街にあるガレリーア・レティーロ・デ・オーロにて個展「私とカメと対岸の空」を開催されます。
http://www.a-t-n.jp/topics/2016/08/_98thu1031mon.html




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2016年08月22日

川合大祐・川柳句集『スロー・リバー』に関する記事

川合大祐の川柳句集『スロー・リバー』が販売されて二週間ほどたちました。早くもさまざまな方が同句集についてご感想をお書きになっています。以下、その記事へのリンクを掲載させていただきます。なおご購入はあざみエージェントにて。


あざみ通信
冨上朝世  川合大祐川柳句集 『スロー・リバー』
http://ameblo.jp/nomark6061/entry-12188987308.html

あとがき全集。
柳本々々  【希望の川柳 十四日目】小池正博と−川合大祐−
http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com/blog-entry-1476.html

いつだって最終回
御前田あなた  【感想】川合大祐『スロー・リバー』−ボルヘスが書いた川柳−
http://ameblo.jp/motokichi26/entry-12188608490.html

与生の月並みな川柳日記
月波与生  川合大祐句集 「スロー・リバー」
http://ameblo.jp/yojyo-tukinami/entry-12189464385.html

あひるのひとりごと
あひる  川は流れる
http://natuno7.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-e2f8.html

あほうどり
丸山進  「スローリバー」 川合大祐・川柳句集
http://blog.livedoor.jp/ssm51/archives/51986597.html

Flowers' Kung-fu
小津夜景  これがSFの花道だ
http://yakeiozu.blogspot.jp/2016/08/sf.html

月刊「ねじまき」
川柳句集「スローリバー」
http://nezimakiku.exblog.jp/24598025

週刊俳句 第486号
西原天気  渚まで 川合大祐『スロー・リバー』を読む
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2016/08/blog-post_14.html

白百合亭日常
竹井紫乙  『スロー・リバー』川合大祐
http://shirayuritei.jimdo.com/%E6%84%9F%E6%83%B3-%E5%B7%9D%E6%9F%B3/

およそ日刊「俳句新空間」
柳本々々  フシギな短詩33[川合大祐]
http://haiku-new-space03.blogspot.jp/2016/08/blog-post_19.html

週刊「川柳時評」
小池正博  川合大祐句集『スロー・リバー』
http://daenizumi.blogspot.jp/2016/08/blog-post_20.html



posted by 飯島章友 at 23:05| Comment(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月21日

Fw:舌 を読む。

徳長怜さんから「舌」が転送されてきた。
「舌」「パピコ」「ペティナイフ」「毛にリンス」「蜂に刺される」「三角折り」になにやら触感の残る句が並ぶ。

整理券ですよと舌をわたされる
事務的にわたされた整理券が「舌」だなんて。じとっと分厚い感触にぞわりとする。誰の舌なのかととりあえず自分の舌の安全を確かめてみる。さて入場のとき「1番から20番までの整理券をお持ちの方〜」のような感じで「舌をお持ちの方〜」と呼ばれるのだろうか。ひとりだけだろうか。何人くらいが前に進むのだろう。バッグやポケットから舌を取り出しながら。係員は無造作に舌を受け取るのだろう。舌と引き換えに案内された席ははたして。

腰骨はパピコにくっついているし
腰骨は作者のものとして読んだ。パピコのひんやりしてやわらかな感覚。パピコはふたつセットになっているけれど、そういえばかたちは女性の体型みたいで、頭と腰のあたりでくっついている。そのパピコに、3人目のパピコみたいに腰骨がくっついているのである。
腰骨にパピコがくっついているのではなくて、腰骨がパピコにくっついている。パピコバイクのサイドカーにわたし。パピコ主体なのである。ひとと異物がくっつく話といえば、楳図かずおの人面譚や、肺の中に睡蓮の蕾を宿した『日々の泡』のクロエなど浮かぶけれど、パピコなのである。腰がびしょびしょしそうで笑ってしまう。「くっついているし」というため息交じりの言い捨てもおもしろい。

「舌」「くっついている」からは「切り離す」という行為が連想されるもので、続く2句には「ナイフ」が登場する。

わナたイしフとガ ふるふる してるとこ
1音飛ばしに「わたしと」と「ナイフガ」を並べて、ふるふる具合をあらわす。「してるとこ」という音も軽くて、ふるふるである。

充電がきれてもしゃべり止めぬSiri
Siriはアップル社の音声アシスタント機能である。Siriを起動してiPhoneに向かって話しかける。「牛舌のおいしい店はどこ?」と聞いたら、Siriが答えてくれるのである。カレンダーに予定を追加したり、友人にメッセージを送ったりもする。Siriに「家族はいるの」ときいたら「わたしとあなただけです」と答えるらしい。ちょっとこわくておもしろい。
さて句中のSiriはついに意思を宿したらしく、充電がきれてもしゃべり止めぬ。アシモフのロボットものを連想する。すでにどこかで起こっているような気がするのが現代の気分なんだろう。

Ladies and gentlemen , 正しい蜂の刺されかた
「お集まりのみなさん」何かと思えば、周知されるのは「正しい蜂の刺されかた」なのである。正しく蜂に刺されるための集い。ばかばかしくてすてきである。

長音の使い終わりを三角折り
「使い終わりを三角折り」といえばトイレットペーパーである。トイレの三角折りをみるとかすかに感情が動く。何なんだろう。みなで揃ってプチ作法というのが、かるーく胡散臭いのである。
ここでは、使い終わったのは長音だ。「使い終わる」までには時間がある。「長い」長音で終わる言葉って、考えてみたけれど、浮かぶのは、悲鳴(ぎゃぁぁぁぁぁ)だとか、親を呼ぶ声(ままぁぁぁぁぁ)くらいだ。そんな言葉をさっと三角折りでしまって、すましこむ。
三角折りをしたのは作者だと思う。長音を使ったのは誰なのだろう。作者であれば「使い終わり」とすることで、発した言葉との心的距離感がおもしろいし、他者の長音をするっと三角折りにしたというのなら、静かな毒があってこれもまたおもしろい。

「Ladies and gentlemen」「三角折り」も整理券をわたされるというシチュエーションや、「パピコ」と同じ日常とすぐ続いている言葉で、そこへ非日常の物語がおしこまれているのが魅力的だった。




posted by 飯島章友 at 20:17| Comment(4) | 今月の作品・鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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