2021年11月19日

「川柳スパイラル」13号発行

川柳スパイラル13号がまもなく発行されます。内容については以下のリンクをご覧ください。

川柳スパイラル掲示板

特集は、今年発売された川合大祐・湊圭伍・暮田真名・飯島章友の句集評です。飯島の川柳句集『成長痛の月』評は、歌人集団かばんの会の久真八志さんが書いてくださいました。久真さん、本当にありがとうございます。

また今号の「小遊星」のゲストは柳人の川合大祐さんです。わたしがランカシャースタイル、川合さんはインディーズ寄りのスタイルかと思いますが、なかなかの好試合になったと思います。もちろん最後は「ありがとうございました」とお互いに座礼をしました。

その小遊星ですが、冒頭に脱字がありまして、「本日」の本の字が抜けております。編集の方々はお忙しいなか作業をしてくださっているのでこういうこともあるのです。編集部の方々、いつもありがとうございます。お読みになるときは脳内で「本」の字を補完してくださいませ。

あと「川柳木馬」2021年秋・第170号をお持ちの方は、そこに掲載されている川合大祐さんの柳本々々論と今回の小遊星を併せて読んでみてください。二倍面白いと思います。
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2021年11月11日

「What’s」Vol.1

「What’s」Vol.1
編集発行人:広瀬ちえみ
年二回発行

10月28日に「What’s」Vol.1が発行されました。創刊号参加者は広瀬ちえみ・水本石華・竹井紫乙・月波与生・佐藤みさ子・川村研治・妹尾凜・鈴木節子・中内火星・鈴木せつ子・浮千草・野間幸恵・鈴木逸志・加藤久子・兵頭全郎・高橋かづきの各氏。

こうしてみると杜人の同人・会員だった方が多いように思います。でも、だからと言って杜人の後継誌と見る必要もないのでしょう。なにせ俳人の方々も参加していますし、杜人色のない柳人も参加しているのですから。

また招待作家として樋口由紀子さんの作品が掲載されています。今後も毎回、短詩型のゲストが登場してくるのでしょうか。

押入れは言いたいことを言うべきだ  樋口由紀子

全体を読んで、今回わたしが最も楽しんだのは加藤久子さんの作品群でした。

体のなかの音組み立ててから起きる  加藤久子
空には穴現場からは以上です
向日葵の首を並べてヘヴィメタル
俎をたてかけておく無人島


杜人のころから、人びとが見過ごしかねない物事を軽やかな文体で描いてきた加藤さん。誌を新たにしてますます感覚が冴えわたっているようです。以下も気に入った作品。

雨音を聴くノアの鼻唄  水本石華
パントマイム映す今朝の水たまり  月波与生
サル目ヒト科マスク属  佐藤みさ子
プリンターに白紙百枚涼新た  川村研治
黒へ黒へと追いつめられてゆく緑  鈴木節子
蝿止まるくれぐれも文芸である  野間幸恵
バックしますご注意くださいって泣くな  兵頭全郎
記のとおり武器はひとりにひとつです  広瀬ちえみ


「What’s」創刊号では柳論も三本収録されています。俳人の叶裕さんによる「瑞々しい終幕 『杜U 杜人同人合同句集』を読む」、月波与生さんの「『そら耳のつづきを』を読んで」、広瀬ちえみさんの「『々々くん』って後ろから肩をたたいたら―柳本々々は何を語り、何を書いてきたのか―」です。また引用句のイメージから掌編を書いた兵頭全郎さんの「はれときどき妄読」もあります。ここ数年、全郎さんがいろいろな場で試みている創作的な評ですね。

編集後記で広瀬ちえみさんがこんなことを書いています。

 「ミステリー列車」に乗って、行き先不明の旅に出るという企画がブームになったことがあります。いうならば「What’s」も「ミステリー列車」。編集人はできるだけアバウトでいることにしてみんな好きにやってよ≠ニ思っています。

俳人と柳人が同じミステリー列車に乗る。行き先は分からない。と言うよりも決まっていない。だからたとえば、五七五という共有の形式をたよりに俳句と川柳を「総合化」した文芸が同誌を契機に起こることだってあり得る。それがどんな発想や内容の詩文芸なのかは分からないけど。

話は飛びますが、総合化と言えば格闘技です。いまでこそ「総合格闘技」という競技ははっきりと認知されています。でも昭和のころは、組技系と打撃系の技術を総合化するなんて夢の境地だったんです。ところが1993年11月12日、デンバーで「アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ」(UFC)が開かれたことで状況は一変しました。なぜならこの大会は、打っても投げても締めても極めてもかまわない衝撃的なルールで行われたからです。

それまでは、柔道・空手・合気道・相撲・中国拳法・レスリング・ボクシング・キックボクシング・プロレスリング(キャッチ・アズ・キャッチ・キャン)など、各格闘技は自立していました。格闘技を総合化する動きはブラジルのバーリ・トゥードという試合形式や、佐山聡(初代タイガーマスク)が創始したシューティングという新興格闘技がありましたが、それらは局地的だったり発展途上だったりしました。それが、第1回UFCが開かれた直後から総合格闘技はまたたく間に世界中に広まっていき、日本でも大ブームとなったのです。

それならば同じように、俳句と川柳の総合化が短詩型作家たちによってなされても不思議ではないし、その可能性を秘めた試みはこれまでも行われてきたのだと思います。大阪の「北の句会」は柳俳混合の会だと聞いたことがあります。同人誌だと小池正博さんと野口裕さんの『五七五定型』(終刊)、中西ひろ美さんと広瀬ちえみさんの『垂人』、それと野間幸恵さんの『Picnic』もそうですね。自分自身が体験したことだと、週刊俳句の「柳俳合同誌上句会」や、2014年に飯島章友がかばんの会で開いた「歌人・俳人・柳人合同句歌会」などがあります。

わたし自身は「領域」を大切に思う人間です。領域があるからこそ自由があると考える人間です。でも、各領域が交流をしていく中でおのずから新興領域が生まれたなら、それにはとても興味をいだくと思います。総合格闘技も、初期のころは「異種格闘技戦」の側面が強く、組技系が有利になったり打撃系が有利になったりと、必勝法がいまいち定まらない競技でした。しかし、試行錯誤のすえ近年は技術体系がほぼ確立。数ある格闘競技の「一分野」として自立しています。

五七五も柳俳の異種間交流や句会での異種間競合、あるいは同人誌での雑居が増えてきた昨今です。総合的な五七五文芸が一分野として確立することがないとは言い切れません。もちろん、それはあくまでも可能性の一つ。ミステリー列車の「What’s」は行き先が不明であって、さまざまな方向に路線が開かれているのだと思います。

なお「What’s」の入手方法についてですが、わたしには分かりません。非売品かも知れません。これまでにお名前を挙げた方々のメールやTwitter、あるいはブログをご存じでしたらそちらでお尋ねください。
posted by 飯島章友 at 07:00| Comment(0) | 柳誌レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月01日

『杜U』─杜人同人合同句集─

発行人:都築裕孝
編集人:広瀬ちえみ

2020年12月25日、『川柳杜人』は通巻268号の発行をもって73年の歴史に幕をおろしました。でも、終刊号だからといって打ち上げ花火はしていません。野沢省悟さんの「杜人らしさは永遠に」が巻頭記事に置かれている以外、いつもの杜人とさほど変わらない印象でした。杜人誌の日常風景を保持したまま終わった感があります。

ひとふでがきのえがおだったよ  佐藤みさ子 『杜人』終刊号

そんな川柳杜人の「同人合同句集」として、今年の4月25日に『杜U』が発行されました。最初の合同句集『杜』は昭和54(1979)年に出たということなので、42年ぶりということですね。暗緑色の布張り製本。まさに杜人のアルバムという感じがします。各同人の50句とバストアップの写真、プロフィール、エッセイという構成。杜人の方々は川柳作品をとおしてしか存じ上げなかったので、新鮮な感覚をおぼえました。

えりすぐりの50句の中より一句ずつ引用。

死後光る時計をだれも持っている  都築裕孝
存じ上げているのは地上の部分のみ  浮千草
ワタクシも電子レンジも回る春  大和田八千代
不意のさよなら不意のふきのとう  加藤久子
きかんこんなんくいきのなかの「ん」  佐藤みさ子
モナリザに髭を描きたすロスタイム  鈴木逸志
お日様は丸でいいのよあんぱんも  鈴木せつ子
入念に分別生きものと生もの  鈴木節子
お手洗い借りるこの世の真ん中で  広瀬ちえみ

杜人の編集人だった広瀬ちえみさんは現在、句会と同人誌を立ち上げ、すでに新たな活動を始めていらっしゃいますが、それはまた、別の話。
posted by 飯島章友 at 07:00| Comment(0) | 川柳句集を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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