もう夏の終わりのツノとして光る 広瀬ちえみ
今号の同人作品より。「夏の終わり」という、よくある臭いフレーズからの唐突な「ツノ」。初読では意表をつかれて面白さが先立ったけど、再読すると「ツノとして光る」の抒情性がしみこんできました。初読と再読とでまったく印象がちがった句です。
みるみる狂う猛暑日なんか作るから 小野善江
誌上題詠より。お題は「 ☼ 」。人間は概念の生き物だから、知識を得るとそれによって翻弄されてしまうこともあります。日々増えていく「〜の権利」など、生きやすさをもたらす反面、生きにくさにもつながっているかも知れない。それは「猛暑日」という概念・システムの創出にもいえると思うのです。
まだ何か言いたそうだね傷口は みさ子
八月句会、宿題「閉」より。傷口は粘液のようにねちっこく小言をいう。治りかけに延々と痒みを出すのなんていい例かも知れない。掲句は「傷口」の悪癖を川柳らしくズバっと抉り出しているのです。
川柳杜人社