編集人:広瀬ちえみ
2020年12月25日、『川柳杜人』は通巻268号の発行をもって73年の歴史に幕をおろしました。でも、終刊号だからといって打ち上げ花火はしていません。野沢省悟さんの「杜人らしさは永遠に」が巻頭記事に置かれている以外、いつもの杜人とさほど変わらない印象でした。杜人誌の日常風景を保持したまま終わった感があります。
ひとふでがきのえがおだったよ 佐藤みさ子 『杜人』終刊号
そんな川柳杜人の「同人合同句集」として、今年の4月25日に『杜U』が発行されました。最初の合同句集『杜』は昭和54(1979)年に出たということなので、42年ぶりということですね。暗緑色の布張り製本。まさに杜人のアルバムという感じがします。各同人の50句とバストアップの写真、プロフィール、エッセイという構成。杜人の方々は川柳作品をとおしてしか存じ上げなかったので、新鮮な感覚をおぼえました。
えりすぐりの50句の中より一句ずつ引用。
死後光る時計をだれも持っている 都築裕孝
存じ上げているのは地上の部分のみ 浮千草
ワタクシも電子レンジも回る春 大和田八千代
不意のさよなら不意のふきのとう 加藤久子
きかんこんなんくいきのなかの「ん」 佐藤みさ子
モナリザに髭を描きたすロスタイム 鈴木逸志
お日様は丸でいいのよあんぱんも 鈴木せつ子
入念に分別生きものと生もの 鈴木節子
お手洗い借りるこの世の真ん中で 広瀬ちえみ
杜人の編集人だった広瀬ちえみさんは現在、句会と同人誌を立ち上げ、すでに新たな活動を始めていらっしゃいますが、それはまた、別の話。