2018年04月30日

HEART OF SWORD:200字川柳小説  川合大祐

ひとりでは遠い明日を夜明けのままで超えてゆくポチがいた。ポチの鼻はいつも濡れていたが、神様は何も禁止なんかしてないので星占いもあてにならないという説明をあてにすほど、ポチは愚かではなかった。海岸のない砂浜で、ポチは思った、斜に構えてたほうが楽になると。その論理に従って、ポチはポチ自身を見た。ポチのようにポチである存在は世界に唯一であると知りながら、気がつけばこの星はポチのみで充満しているのだった。

  耳元で叫んでT・Mレボリューション  樹萄らき(今月の作品「ガラス越し」より)
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2017年11月30日

んなあほな:200字川柳小説  川合大祐

んた、この世をどう思う。初の数秒、チャンネルを合わせ損ねた必殺仕業人に問われた。の世と言われても、この千年ほどアパートの外に出ていないからよくわからない。は良かった。も鰯缶も共通していた。であったからである。と呼ばれることもあったが、そもそも乱気流の彼方のチョコレートパイの躍り食いの別称なのでいたしかたがないと言うこともできるだろう。を言っているのか明快すぎて解らないが、祇園精舎にアラン・ドロン。

  ん行から諸行無常のチョコレート  くんじろう(11月のゲスト作品「矮星」より)

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2017年10月08日

そういうじだいでしょ。:200字川柳小説  川合大祐

がっこうからかえると、おかあさんが熊になっていました。熊というかんじをかけるのは、おかあさんが熊になるたび、ホワイトボードに「きょうは熊です」とかいておくのでおぼえてしまいました。熊は「ふっふっふ。ふっふっふ」といきをして、いまをうろついているので、あぶなくてしかたありません。たまにかみついてきます。さんぽにつれだすと、こうえんでころげまわります。いいました。「おかあさん、あたし、砂場になるよ」。

  母熊を連れ鉄棒にぶつかるよ  暮田真名(今月のゲスト作品「モアレ現象とは」より)

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2017年09月10日

めぐりゆく季節に:200字川柳小説  川合大祐

アホといえば坂田だが、『帰ってきたウルトラマン』のヒロインは坂田アキと言うのだった。惜しい。何が。夏。夏はもう過ぎてしまった。アホの、いやアキの坂田も番組途中でナックル星人に殺されてしまった。可哀相である。祭り。だから秋。郷秀樹、という冗談みたいな名の奴がウルトラマンなのだが、結婚したら郷アキである。語呂が悪すぎる。今回小説として体を成していないが、それを称してアホと呼ぶ。そーれそれそれお祭りだ。

  夏祭り体全体アホになる  池上とき子(「川柳の仲間 旬」No.213 より)

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2017年09月03日

だったんだ:200字川柳小説  川合大祐

猫の惑星があった。あいにくと猫座にはなかったが、そもそも星座という概念が猫の惑星にはないのだった。星は巨大な猫だった。縞猫だったのか三毛猫(だとすればおおかた雌だろう)だったかわからない。それでも宇宙空間に浮く眠り猫は、ときおり身をよじらせながら、あくびをするのだった。あくびのたびに、五重塔が倒壊するので、絶望した宮大工は首を縊ろうとした。深い森の一本の木。それが惑星猫の毛か、木かわからなかった。

  縊死の木か猫かしばらくわからない  石部明(「セレクション柳人3 石部明集」より)

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