入間市とくるま市にも並ぶくるぶし 兵頭全郎
(ふらすこてん 第41号掲載/第80回句会/27年8月1日/席題『くるぶし』/選者山口ろっぱより)ひとそれぞれ情緒が動く言葉があると思う。
わたしの場合、動物なら「犀」だし、からだの部位なら「二の腕」そして「くるぶし」。いろんなストーリーが浮かぶ言葉だから、全郎さんの句には意表をつかれ、たのしくなった。
全郎さんのくるぶしは意味が剥がれて音だけになっている。
「入間市とくるま市」「くるぶし」の後方の音に着目した、つまり逆引き辞典のなかでの並びの音。
わたしは逆引き辞典を持たないので、ネットの辞書の「るまし」後方一致で検索してみた。「入間市」と「くるま市」はお隣さん。さらに隣は「しるまし」で漢字だと怪・徴で奇怪な前兆の意である。
おそらく「入間市とくるま市」と「くるぶし」の並びの関係は、後方二音が「まし」と「ぶし」なのだから、逆引き辞典ではそう遠くない場所にあるのだろう。
(韻を踏ませることを考えるなら逆引き辞典は有効に活用できそうだ)
くわえておもしろいのは「くるぶし」に「入間市とくるま市」という地名をあわせたところで、あたかも架空の土地「くるぶし」が地図上に並んでいるようだ。一度剥がされた意味が違う顔で貼りつけられる。どんな町なのか。仔細に想像してみるとおもしろいかもしれない。
同じ句会での、くるぶしの句。
くるぶしから鶴を出したりしまったり 榊陽子
「くるぶしっ」とさけぶ宮島の鳥居 石田柊馬